好きまでの距離感〜遠藤君の下心〜


どうも遠藤です。
剣道部の主将なんぞをやっております。個人的には責任ある立場とか、みんなをまとめていくリーダーなんてポジションは面倒くさいんですが、ついつい引き受けちゃってあえて主将なんてもんをやっております。

っていうか。
まぁ俺の他に剣道部のトップに相応しい人物はいないんじゃないのかな〜って、やつ?
何たって実力はあるし、見た目もいいし、カリスマ性もあるし。この俺以上に剣道部の看板をしょって立つ人はいないでしょう。
だから俺が主将になるのは当然の結果って事だよね。

そんな訳で一応剣道部を引っ張っている訳なんだけどさ。
ただ今うちの剣道部には、俺の地位を脅かす人物が存在しているんだよね。
俺より一学年下の野間桂一郎って奴がよ。

最初に会った時から愛想の無い奴だと思ったんだわ。
剣道部の新入部員での挨拶の時から、こいつは俺達上級生を前にしても臆することもなく、かといって人なつっこい態度をみせるでもなく、落ち着き払った態度で自己紹介をすませていたんだから。
「野間です。お願いします」とね。
他の新入部員の連中は、ちょっとビクついたり、緊張している態度を見せたりとかしてるのによ。野間の奴ときたら、平気な面で簡単な自己紹介を済ませた後は、軽く頭を下げてそのまま真っ直ぐ俺らを見返していたくらいだからね。一瞬、ガンを飛ばしてるのかこいつは?とか勘ぐったくらいだからよ。

後からあの無愛想は元からの性格だとは分かったけどさ、それにしてもホント可愛げのない一年生だったんだよね。

そのくせ、こいつと来たら背は高いわ、剣道の腕前はそこそこだわ、俺には負けるけどそれなりのルックスしてるんだ。
しかもあの可愛げの無い性格がどうも女子からの受けが良いみたいなんだよね〜。
渋いだの、格好いいだの、落ち着いてて大人びてるだのさ。
俺とまるっきし間逆の性格だもんで、それがどうやら女子達の間に密かに人気があるみたいで、おかげで剣道部を覗きに来る女子の数が増えちゃったくらいだから。

その所為で女子剣道部の主将の田中から、「ウザイ!」とかクレーム付けられたし。んなことで怒られても俺の所為じゃないでしょ〜って反論したいんだけどさ、こっちはよ。

そんなこんなで、態度のでかい新入部員の所為でこっちは色々あったんだけどね。
だからといって、俺はそんなことくらいで可愛い(まるっきり愛想無しだけど)後輩を疎んじたりしませんよ?
部員は分け隔て無く面倒みていますから。
時々はつまんねぇ奴…とか、考えるけどさ。

まぁでもね。人には意外性のある一面ってもんが誰にでもあったんだろうな。
あの愛想無しには結構可愛いおまけがついていたんだわ。
あいつの幼なじみっていう可愛い存在が。

最初は誰だ?この可愛子ちゃんは…とか思ったんだ。
しかもその可愛子ちゃんはあの無愛想男の幼なじみで、あろう事かあいつに弁当を届きに来ちゃったりしてるわけなのよ。
何なんだ、そのまるで少女漫画のようなシチュエーションは?とか思っちゃったよ。

それでも野間の家の事情とか、家族の状態とかを聞いて弁当の宅配の理由について納得はしたものの、やっぱりベタな少女漫画の世界だわね〜と感じるのはしょうがないだろう。

届けに来るのが女じゃなくて、男っていうだけの違いだから。
それもさ、男にしておくには勿体ない可愛子ちゃんだったもんで。俺の好奇心が疼くのは致し方ないと思うんだ。

その可愛子ちゃんは中西和正という名前だった。

ホント、あの無愛想男の幼なじみがこんな可愛子ちゃんだなんて、詐欺だ〜と言いたいくらいにね。
何しろ、中西ちゃんときたらまるっきりの女顔。髪は猫っ毛らしく、色も茶色かかってて、サラサラで細い。顔がまた、女だったら絶対俺の好みのど真ん中だったんだもの。
顎が細くて、唇は小さめ。小作りな顔の中に、不釣り合いなくらいに大きな瞳。それがまた感情の起伏の上下に合わせてくるくると良く変わるんだ。
からかうと直ぐふてくされたり、拗ねたり、怒ったり、笑ったり。
野間の奴が鉄仮面男に反して、この中西ときたら表情が分かりやすい奴なんだわ。
喜怒哀楽がはっきりしているっていうか、感情表現がストレートなんだもの。
この性格すらも俺の好みにクリティカルヒットなんだよね〜。

うん、めっちゃくちゃ好みだったんだ。