「たっぷりの蜂蜜シロップかけホットケーキとバニラアイス添え」

アーロンと喧嘩した。 絶対に許してなんかやらないんだ。 だって僕は悪くないもん。 そりゃあ悪戯はしたよ。 隣のおばちゃんのバックにカエルを入れたのはいけなかったのかもしれない。 だからちょっとは…悪かったかな。 で、でもさ。 あのおばちゃんがアーロンを困らせるからやったんだもん。 アーロンがとっても嫌がっているのに、止めないんだよ。 アーロンが「まだ考えられない」とか「その気がない」って言ってんのに、おばちゃんってば全然言うことなんか聞かないで、「このお嬢さんは本当にいい娘さんなのよ」なんて言ってお見合いを進めるの。 お見合いだよ?! 僕がいるのに、アーロンに結婚しろっていうんだ。 そんなの絶対許せない。 アーロンだって嫌がってるんだから。 アーロンは僕とず〜〜〜っと一緒にいてくれるって言ってるんだからね。 僕がそう言ったらさ、何でかおばちゃんが変なため息をつきながらこう言ったの。 「あなただって優しいお母さんがいてくれたら嬉しいでしょう?男一人で子供を育てるのは大変ですもの。私、あなた達のことを心配して言ってるのよ。やっぱり女手があったほうが何かと便利ですものねぇ」…だってさ。 そんなのいらないもん! お母さんは死んじゃったお母さんがいるもん。 アーロンがいれば、誰もいらない。アーロンしかいらないもん! アーロンだって僕がいてくれれば良いって言ってくれた。女の人なんか興味ないって。 お見合いもする気なんかないって。 でもね、おばちゃんが僕の事見ながら言ったんだ。 「大人の事情とか気遣いなんて子供には分からないものなのよね。お見合いを嫌がってるのも、きっと照れているだけなんだから。僕にはちょっと難しいでしょうけどねぇ………」 何だかその言い方って、スッゴイむかついた。 そう言いながらさらにおばちゃんはアーロンに色んな人の写真を見せて、どうかしら?って進めたんだ。 僕んちの居間で。ず〜〜〜っと。 だからおばちゃんのバックにカエルを入れてやったんだ。 ほんのちょっとした悪戯なんだよ? そ、そりゃあおばちゃんを驚かせようと思ったのは確かだけどさ………。 でも、僕はアーロンを助けようと思ってしたんだ。 なのにどーしてアーロンがあんなに怒るんだろう。 おばちゃんがバックの中に入っているティッシュを取ろうとして、中に手を入れて変な感触に気づいてカエルを握りしめながら持ち上げたのはちょっと面白かった。 でもその後、人間じゃないみたいな声だして気絶したのはビックリしちゃった。 僕、あんな物凄い声って初めて聞いたかもしんない。 あ、それと人が気絶するのも初めて見ちゃった。 本当にドラマみたいに気絶するんだね。スッゴイな〜って、思って見ちゃった。 気絶したおばちゃんをアーロンが抱きかかえて、それから手にしたカエル(もちろんゴムのオモチャだよ)を見て、直ぐに僕がやったんだって分かったみたい。 何とかおばちゃんの気を取り戻させて、それからお家に送り届ける間中、アーロンはおばちゃんにず〜っと謝り続けていた。 …別にアーロンが謝ることないじゃん。 だってあれはあのおばちゃんが悪いんだ。嫌がっているアーロンにお見合いなんか進めるんだから。 でも、ものすっごくアーロンに怒られた。 ものすごーく、ものすごーーーーーく怒られた。 どーして? 僕はアーロンが困ってると思って、それでおばちゃんから助けようと思ってしたんだよ。 本当に困らせようと思うんなら、ゴムのカエルじゃなくて本物のカエル使うもん。あ…水槽に蛇のニョロ吉もいた。 ニョロ吉でもよかったかしら。(それを言ったら、さらにアーロンに怒られた) でもさ、僕はアーロンを助けようと思ったんだから。 アーロンだってあのおばちゃんが苦手だって言ったじゃない。 それを言ったら、アーロンが「それとこれとは別だ」なんて言うの。 そんなの分かんない。 …だから今はアーロンと喧嘩中。 何言ったって、許してなんかやらないんだ。 僕は悪くないんだ。 アーロンを助けようとしただけなんだから。 もう口だってきいてやんない。 「おはよう」も「ただ今」も「行ってきます」も言わない。 そう決めたんだ。 アーロンがご免なさいって言うまで口きいてやらないから。 こーいうの何て言ったっけ? お…男の…意地?…って言うのかな。 意味は分からないけど、そうなんだ。 僕がそうしてそっぽ向いてたら、アーロンが台所から声を掛けてきたんだ。 「おやつのホットケーキが焼けたぞ」って。 ![]() ぐらっ! ふ…ふんっだ! 返事なんかしてやんない。 美味しそうな匂いがしていたけど、何も言わないんだから。 「今日のホットケーキは特別製だぞ。たっぷり蜂蜜シロップもかけてるからな」 ぐらぐらっ! 蜂蜜だ〜〜〜い好き! うわぁ〜ん。良い匂いがする。 で…でも、口なんかき、きかないんだもん。 「ああそうだ。今日はそれにバニラアイスもつけてやろううか。お前、アイス好きだろう?」 ぐらぐらぐらっ! アイスも大好き。 お腹も減っている。 でも…でも、男の意地だもん。 そんなホットケーキなんて…蜂蜜シロップなんて…バニラアイスなんて…。 そんなのなんかで…で…で…。 僕が何も答えないのをアーロンはどう思ったんだろう。 ちょっと間をおいてから、ため息ついてこんな事を言ったんだ。 「そうかいらないのか?せっかく焼いたのにな。そうだな…いらないなら、裏の家のポチにあげようかな。ポチは甘い物が大好きだからな」 「だめぇ!!!」 それを聞いた瞬間、ダッシュで台所へいってホットケーキを貰いに行っちゃったんだ。 「ポチになんかホットケーキやっちゃ駄目!アーロンのおやつは美味しいから、ポチになんか勿体ないんだもん。ポチは犬だから、おやつなんかいらないんだもん。アーロンのおやつは僕のだからね。そ…それにポチに甘い物は駄目なんだよ。だって…だって、犬に人間の食べ物をあげちゃ駄目だって…普段アーロンが言ってるじゃないか。だから僕が食べるの!ポチになんかあげちゃ駄目ぇ!!!」 僕がそう言ってホットケーキのお皿を抱きしめてたら、アーロンが「じゃあ食べるのか?」って言うから「うん」って頷いたら、アーロンがなにも言わずにスプーンをくれたんだ。 これを使って食えっていうことなんだろう。 もちろん食べたよ。 全部。綺麗に。 すっご〜〜〜〜く美味しかったぁ。 でもね、僕が食べている間中アーロンが笑いながらこっちを見ていたのはなんとな〜く気になった。 ん? 口をきかないんじゃなかったって? あ…あれはぁ〜〜〜。 えとね…それは今度にするんだ。 だって、ほら…やっぱり僕がアーロンのこと無視してたら、可哀想でしょ? だから止めにしてあげたの。 こういうのなんて言ったっけ? 前にブラスカのおじちゃんに聞いたんだよね。 えっと…確か…太ももが広い男?…っていうのだったっけ? 小さな事にはこだわらない、偉い人の事だって。 それが何で太もも? ん〜〜〜、まぁいっか。 つまりそういうことなの。 僕は”太ももが広い男”だから、アーロンの事も許してやることにしたんだから。 絶対にホットケーキに誤魔化された訳じゃあないんだからね。 喧嘩はまた今度にしてやるんだ。 でね。 僕がそれを言ったら、またアーロンが笑ってるの。 なんで? END |
なんとなく書きたくなってしまった子ティーダのお話。
ほのぼのして、ちょっと悪戯っ子な子供なティーダ。
男の子は少しくらい腕白なほうがいいと思ってるから。
外でがんがん遊んで、怪我lとかもバンバンしてる子が好みでして。
でもって、そんなティーダをやきもきしながら面倒を見ているアーロンが
いたらいいなぁと思って書いたお話がこれ。
書いていて自分でも楽しかったです。
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