| +++ NewYear kiss+++ 「もーいい加減にしようよ!スッゲー量の買い物だぜ?」 ティーダの腕には大量の食料品が詰まった袋。 それも右と左に一つづつ。 アーロンも片手に大きな袋を2つ下げている。 片手にはメモ書きが一枚。それもびっしりと細かい字で買い物内容を書いていた。 「重曹・・・買ったかどうか覚えているか?」 「えー?何だよそれ。記憶にもないッスよ・・・。」 「黒豆を煮るのに絶対に必要なんだが。」 時刻は18時を過ぎようとしていた。 荷物を車にぎゅうぎゅうに詰め込んで。 冬場だというのに、汗ばんでしまって袖を捲る。 「お正月用品の買い物、これで終わり?」 缶ジュースを片手にアーロンに問うた。 「ああ。これからが忙しいんだ。」 前を向いたまま、ティーダの手の中の缶を取り上げて。 残りの中身を一気に飲み干す。 「あ!全部飲んだッスかー?!俺あんま飲んでないよー!」 家に帰るなり、アーロンはジャケットをソファの上に脱ぎ捨て(普段は丁寧にハンガーに掛けるのに)。 エプロンを装着する(ある意味戦闘準備だよね・・・)。 山のように買い込んだ食材を手早く分けて、腕まくりをした。 「手伝う気は・・・。」 アーロンがこちらをちらりと見る。 「うん、ある・・・けど、おせちって何すればいいか全然わかんないけど・・・。構わない?」 言いよどむ所に溜め息をついて、アーロンは手の中の食材に再び視線を落とした。 「もういい。適当に遊んでおけ。」 「えっ?でも・・・。」 今年は所用で年の瀬ギリギリまで買い物に行けず、おせちの準備が出来なかった。 だが、アーロンは 「出来合いのおせちは塩辛い。無駄に甘い。不味い。」 の一言でこれ程までギリギリになっても手作りにするといって譲らない。 「いっそ、おせち作るの止めれば?」 と言っても。 「正月が来ない!」 の一点張り。 一応の掃除やそれなりの飾りつけは済ませたものの・・・。 「本当に手伝わなくてもいいの?」 「仕方がない、かえって手間がかかっても困るからな。」 声音は優しいけど冷たく言われて、ちょっとショックだったけど。 邪魔になるのは重々承知していたし。 実はアーロンに見せたいものがあるから。 好都合と言えばそうだった。 それを準備するには時間が掛かる事は解かっていたし・・・。 今の時刻は19時過ぎ。 冷え切った家の中が、鍋をかけた蒸気で少しずつ温まってくる。 同時に色々な料理の香りが漂い初める。 アーロンは圧力鍋を使ったり、電子レンジを利用して手間を省きつつ、手早く料理を作り上げる。 ティーダは2階の自室でそれを感じながら。 時間をゆったりと過ごす。 大晦日の午後3時まで仕事があって少しばかり疲れていた。 帰ってきたその足で買い物にも行ったし。 アーロンも午前中まで忙しくしていたのに、休む時間を与えてくれた。 ちょっと言い回しは冷たかったけれど。 その心遣いが嬉しい。 手足を伸ばしていれば、静かに睡魔が寄ってくる。 やらないといけない事が沢山あるのに・・・。 お腹もすいてるのに。 重たくなる瞼を止める術も無く。 誘われるままに眠りに落ちた。 今は20時近く。 こつこつと控えめなノック。 おせちを作るのに時間を取りすぎて、ティーダにご飯を食べさせてやることも出来なくて。 一つ空いたコンロで何とか作り上げた食事を片手に部屋を覗けば。 主は規則正しい寝息を立てている。 幼く見えるその姿に思わず零れる笑み。 枕元にお盆を置き、起こさないようそっと髪に触れ。 音を立てぬようにドアを閉めた。 もうすぐ21時。 「ん・・・。」 ああ、眠っていたんだ・・・。今何時だろう。 まだ起き切れない頭で時計を見て。 跳ね起きた! いけない!仕度をしないと!! ふと見ればサイドボードにはお盆があり。 もう湯気は上がっていなかったけれども、途端に空腹を訴える。 急いで口に放り込んで、律儀に手を合わせる。 「ごちそう様!アーロン。さて、と!」 今年が終わるまであと1時間を切った。 貰ったDVDをデッキに入れて。 テレビ画面の中でにこやかに笑うオバサンの言うことに従う。 「ったく・・・。何回見ても何回聞いても解かりにくいよな・・・。ああもう!もう一回巻き戻さないと。」 ベットの上に広げた沢山の種類の布地と格闘する。 時刻は11時30分を廻った。 さすがに例年のように重箱に何段も詰める事はできなかったが。 アーロンは満足の吐息をついた。 色とりどりに並べ、ティーダの好む物を少し多めに詰めた。 後は。 居住いを正し、新年を迎えるだけだ。 自室に入り、葡萄鼠色の着物に袖を通す。 着なれた着物をいつもより丁寧に着付ける。 同色の羽織を身に着けた。 年の変わり目に相応しい空気に変わる。 丁寧に着付けたせいで今年の終末まで後15分となった。 「はああー・・・。やっとできた・・・。」 姿見の前に立ち、自分の出で立ちを確認する。 「まあまあ。かな?」 もう10分もしないうちに新年がやって来る。 今日2度目のノック。 「起きているか?ティーダ。」 「うん。起きてるよ・・・。あ!ちょっと待って!!」 だが今ひとつ制止が遅かったために、ドアが開かれてしまった。 「・・・お前。」 「ンだよー、驚かそうと思ったのにさぁ。」 アーロンがじろじろと足元から頭の上まで見る。 「あ、あんまり見るなよ・・・。なぁ、どっかおかしい?DVD見て真剣に・・・。」 ティーダは浅黄色の長着に同色の羽織姿。 無言でアーロンは手を伸ばし襟を整えてやる。 「良く一人で着れたな。それにこれは買ったのか?」 「すっげー時間かかったけどね。」 にっこりと笑顔を見せ、もう一つの質問に答えた。 「勿論買いに行ったッスよ。そのお店で着付け方のDVD貰ったんだ。似合うッスか?」 くるり、と一度廻って見せ。自分の足元を覗きこんで白い足袋をしげしげと見詰めた。 「足袋って履きにくい上に、なんか気持ち悪いよな。」 子供のような仕草にアーロンの笑みが誘われる。 もう、3分もしないうちに新年がやってくる。 ふと気がつけば。 季節の変わり目はすぐ側まで来ていた。 ティーダはアーロンに手を伸ばして、輝く瞳で見詰めた。 「ね、アーロン。キス・・・して?」 言葉無くとも当たり前のようにアーロンは口付けを与えてくれた。 目を閉じてお互いの唇の感覚を楽しむ。 何度か角度を変えていくうちに自然に深くなっていく。 アーロンの手がゆっくりとティーダの体を撫で始めたとき。 とんとん、とティーダがアーロンの背中を叩いた。 「・・・どうした。」 「へへっ。なぁ、気がついた?」 嬉しさを堪え切れないと言った様子でティーダは時計を指差した。 時刻は0時を僅かに廻っていた。 「・・・?」 訳が分からん、という表情が表れていたのだろう。 わかんないの?とティーダがむくれる。 「ホラ、新年になったじゃん。」 「それで?」 「俺達ね、一年越しでキスしてたんだよ?キスしたまんま年越ししちゃったもんな。すっげー長い間って感じがしない?」 自分の言葉に満足して、また満面の笑みを見せる。 「子供のようなことを言う・・・。」 再び手を伸ばしてティーダを抱き寄せ。 またゆっくりと体の線を辿る。 身じろぎをして腕の中から逃げようとするのが解かる。 「んっ・・・ね、え。俺、腹・・・減ったッス。」 一時間ほど前に軽く食べたばかりだから、言うほど減ってはいないけど。 「年越し蕎麦を準備してある。後で食えばいい。」 あっさりと切り返される。 「・・・う。あー、えと。折角、一生懸命・・・ンっく・・・着付けたんだけど!」 本当に大変だったし。何より新年も明けて間も無いのに・・・。 「俺が責任持って着付けてやる。」 聞く耳持たず。アーロンの指は遠慮なく帯を解きにかかる。 何とか逃れようとしていたティーダの体から力が抜けた。 寄りかかりつつ、諦めが混じった声で取りあえずの挨拶を口上する。 「明けましておめでとー、今年も宜しく・・・アーロン。・・・あー腹減ったッス。」 「ああ、おめでとう。後で腹一杯食わせてやる。今はこちらに集中しろ。」 有無を言わせない深い口付けを交わして。 新年の夜は更ける。 END 「CRYSTAL WIND」の安藤蒼師様のお正月のフリー小説です。 二人ともって、とっても幸せそうで熱々でもう当てられちゃいます。あー熱いったらないね。 アーロンがまた優しくて、ティーダが可愛いんだ。一生懸命に着物の着付けをしている様なんか、読んでいるだけで微笑ましい気分になって笑みがこぼれてきそう。(でも直ぐに脱がされちゃうのよね〜) 一年越しのキス。年をまたいでのキスなんて、ロマンチック。 何だか二人のそんな会話とかを読んでいると、幸せ〜な気分にさせられちゃいます。 蒼師さ〜ん、こんな素敵な小説をありがとうね〜。 |