| 「ハァ・・・アアッ」 掠れてしまった声は喉に張り付いて、吐息にしか聞こえない。 もうどれくらいの間、二人でこうしているだろう。 薄明かりの中に切り出された二人。 永遠のようで刹那のようで。 紅 彩〜KOUSAI〜 乱れた呼吸に、酸素は上手く取り入れられず。 僅かな目眩をも伴って、やむなくその瞳を閉じる。 「なんだ?まーだ誘ってんのか?」 笑いを含んだ声。 「ば・・・か、言ってないで、よ。も・・・う、動け、ないッス。」 途切れ途切れに言葉を返す。 ふわり、と労うように大きな掌が触れた。 頬を撫でて、髪を梳くように撫でる。 行為の後の甘やかな時間。 ゆっくりと目を開ければ、穏やかな紅い瞳。 今度は寝転んだままティーダが手を伸ばした。 すぐ側にある顔を指で辿る。 チクチクする鬚。顔を渡る大きな傷痕。 ふと指が止まる。 紅い瞳に惹かれて。 「すごい紅いッスよね、オヤジの瞳って。」 よく表情を映す燃えさかる紅。 言葉を受けて、少し瞳が翳る。 ジェクトは一度視線を外して。改めてティーダを映した。 「俺の親父もお袋も・・・よく覚えちゃいねぇが、二人とも色は茶色だったはずだ。」 「え・・・?」 流石に言葉を失う。 構わずに続けた。 「まー、コレが原因で随分と苦労したぜ。一番苦労したのがブリッツのジュニアチームに入るときだったか。」 「何で?瞳の色くらいでさぁ。オヤジの実力で何の苦労があるんだよ。」 途端に、悪戯めいた光が宿る。 「ほー。やっとオメェにも俺様の凄さが・・・」 「うわー。オヤジってスゴーイ(棒読み)・・・で?その先は?」 ティーダが話の腰を折って続きをねだる。好奇心に満ちた蒼い瞳。 このガキ・・・と思いつつも、続きをぽつぽつと話し始めた。 入団テストの時は確かまだ年は2桁に乗ってなかった筈だ。だが実技には何の問題もなかった。 それどころか鳴り物入りでテストを受けに来た年上の子供を軽くあしらったほどだった。 誰も追いつかない泳力。荒々しいが切れのあるシュート力。 そして。猛々しく孤高の光を宿した瞳。どんな大人も、名のある選手をも圧倒した。 だがそれは同時に多くの敵を作り、心身ともに多大な攻撃を受けた。 決して屈する事はなかったが、いよいよ入団が決まり、後は契約のみという所まで来た時。 チームの総オーナーに呼び出されて契約は出来ないと言われた。 何故か、といい募れば。 意外な答えが返ってきた。 「君は健康体では無いからだ。」 ぎくり、と身が強張る思いがした。隠し続けた事実。 オーナーが指差した先はジェクトの紅い瞳だった。 「その紅い瞳は劣性遺伝子故だという事を君は隠していた。どれほど優秀な選手でもうちで雇うことは出来んよ。」 どこからか持ち込まれたジェクトの秘密。陥れる為の告げ口。 劣性遺伝子とはいえ視力が弱い訳でも、他に身体的にも何の問題があるわけではない。ただ、色素欠落というだけだ。 「すまないね。契約は結んでいないが・・・君のような選手を見逃すのは非常に残念だ。」 とオーナーが差し出したのは、厚く膨らんだ封筒。 要は金を払うから穏便にこの場を去れと言っているのだ。 「ふざけンじゃねぇ!!」 封筒の中身を撒き散らしながら思い切り投げつけ。 二度と戻らない部屋を後にした。 その後、もう家に帰る気も全くなかったし、暫らく街を彷徨っていた。 毎日のように喧嘩に明け暮れていたある日、エイブスのスカウトマンと名乗る男に声を掛けられた。 ジェクトがかのチームと契約をしなかったと聞いて探して歩いたという。 しかし、エイブスと言えば名門中の名門。ジェクトが入れよう筈もなかった。 例の体のこともある。 「秘密にするからバレた時に困るのさ。いっそオープンにして君の魅力にしてしまえば良いんだ。」 あっさりと男は告げて、手を差し出した。 それが自分がブリッツの世界に入る最後のチャンスだと思い。 迷うこと無くその男の手を取った。 「で。まぁ今に至る訳なんだがな。」 「何だよ・・・それ。」 ティーダの声が震えている。 「良くあることだろうが。優秀な俺様が怖かったんじゃねぇか?」 「だからってさ、おかしいよやっぱり。なんかスッゲ腹立つんだけど。」 「・・・オメェが怒る事じゃねぇよ。」 ジェクトがティーダの髪を撫でた。 「で?どこのチーム?アンタを蹴った馬鹿なチームって。」 少し考えてジェクトがあるチーム名を告げた。 「はぁ?マジで?だからあそこのチーム万年最下位なんだよ。でもよかったじゃん、あんなチームに入らなくてさ。」 ティーダがまるで自分の事のように怒る姿に嬉しくなって。 つい、力任せにぎゅう、と抱き締めた。 「く、苦しいって!何だよ?急に!!」 「・・・黙っとけ。」 仕方なくジェクトの裸の胸の中で目を閉じる。 ジェクトはティーダの髪に顔を埋めて。彼もまた静かに目を閉じた。 ティーダが聞こえないように呟く。 「・・・アンタの紅い瞳、大好きだよ。」 end 「CRYSTAL WIND」の安藤蒼師様のジェクティ愛護月間でのフリー小説です。 ジェ、ジェクトがもう最高に素敵なのです。 男くさくて、でもどこかやんちゃなところがもろに私好み。 ティーダもなーんか、可愛くって好き。 二人のこのいちゃつき方にいらん事をつい考えてしまいそうになります。 だって、二人ってばこの会話をぜ〜んぶベッドの上でしているんですよお嬢さん。(誰がお嬢さんなんか) この後二人はどうするのかしら?もしかして第二ラウンド突入? な〜んて邪なことを想像してしまいそう。(って、わたしだけ?) もう、こんな素敵な小説を蒼師さん有り難う! 声を大にして叫んじゃう! |