「り、理恵さん...ブラ渡したら、胸が見えちゃうわ...」
詩織は、理恵に常識的な返答をする。
「そんなの当たり前じゃない。 さっさと渡しなさいよ!」
理恵は、詩織の羞恥などまったく気にしていなかった。
それどころか、逆に、煽る。
「別にいいけどね。セーターこのバケツに入れちゃうから。」
そういいながら、理恵は脚立を降り始める。
そして、わざと、詩織に聞こえる様に、周りの子達に宣言した。
「ブラ渡さないって。 もういい加減飽きてきたし、セーター洗ってあげて、汚水ごと、先生にかけちゃおうよ。」
あまりに酷いことであったが、聞いている子達も、特に、罪悪感など、持ち合わせていないようだった。
「理恵。 早くやっっちゃおうよ。 私、もう彼との約束の時間になっちゃう。」
1人の子の言葉だった。
この子にしてみれば、教師へのいじめなんてどうでも良い事のようだった。
”き、着る物が無くなっちゃう...”
さすがの詩織も、妥協せざる終えない。
「わ、わかったわ。 ブラ渡すから、ここから出して!!」
教師も、へったくれも無かった。
詩織は、悲痛にも似た声を上げる。
理恵は、その言葉に、にやりと笑みをこぼす。
また脚立を登り、詩織を見下した。
そのまま、理恵は、なにも言わず、よこせとばかりに、手を伸ばした。
詩織は、自分の生徒の前で、素肌を晒すしかなかった。
理恵の視線が痛い。
片腕で、ふくよかな胸を押さえながら、片手で背中のフォックに手を伸ばした。
「先生が、ブラ外すわよ。」
理恵が、周りに宣伝するように言う。
その言葉に、詩織は、一旦躊躇するが、やめることなどできなかった。
詩織の背中でとまっていたブラが、ハラリと脇の方にはだける。
もう、片手で抑えた手だけで押さえられている。
白く、つややかな、詩織の胸が、自分の腕で押さえられ、胸の谷間を強調するように、
見え隠れしていた。
見せたく無い場所を必死に隠しながら、ついに、詩織は上半身裸になった。
剥ぎ取ったブラを、理恵が、手を伸ばして受け取る。
そして、ヒラヒラと、周りに見えるように振る。
「ぶ、ブラウス返して..」
詩織は、約束のブラウスを要求する。
理恵は、その要求を無視した。
「みんなも見る?先生の胸 エロっぽいわよ。」
その掛け声に、脚立に、他の生徒も詩織を覗く。
まるで動物園の猿のように、裸体を鑑賞される気分だった。
なるべく、胸を見せない様に、便器の奥に、斜に構え、視線から、胸を遠ざける。
「詩織先生。良く見えないんだけど。」
一人が、声を掛ける。
もう一人が、調子ずいていた。
「先生! 乳首見せてよ。」
乳首という単語が、ギャクっぽかったのか、うなだれている詩織を除き、爆笑の渦がおきる。
「ぶ、ブラウス返して..」
詩織は、つぶやくことしかできなかった。
「先生!乳首出せって言ってるでしょ?返すのは、それからよ。」
理恵が、口調を命令系に変え、詩織に迫る。
詩織は、蛇に睨まれた蛙のように、視線を理恵に向けた。
その視線は、生徒と教師の物では無くなっていた。
詩織は、うつむいたまま、胸を押さえていた腕をずらす。
真っ白な胸が、少しづつ露になっていく。
形の良い胸の先端が、観覧者たちの前に披露されてしまった。
くすみなど知らないかの様に、白い胸に、薄紅色の乳厘と、少し尖った乳首が乗っていた。
「パシ!!」
その音は、1つでは無かった。
計った訳ではなかったが、数人の生徒が、携帯のカメラのシャッターを押す。
「や、やめて!!!!」
詩織は、慌てて、胸を隠すが、遅かった。
「撮れたわよ。」
その声と共に、歓声が上がる。
そして、全員が、脚立から降りる。
「そ、その写真どうする気!! 服を返して!」
個室で、一人になった詩織が、声を出すが、返答は無かった。
「逃げるわよ!! ガチャン。」
理恵の声と共に、音がして、足音が遠ざかる。
”ふ、服.....”
詩織は、裸の胸を押さえつつ、ドアを殴打する。
”あっ”
ドアの支えを外したのか、ドアが半開きになる。
恐る恐る外を覗く。
既に、理恵達の姿は無かった。
”しゃ、写真.....”
空ろになりながら、必死に、胸を抱える。
腕に収まりきれない柔らかい肉が、こぼれそうだった。
「そ、そんな!!」
詩織の目にありえない光景が映った。
自分の、ブラウスと、スカートが、バケツの中に沈んでいた。
”ひ、酷すぎる....”
真っ白だったブラは、既に、ねずみ色に変色し、油の浮いた汚濁した水に沈んでいた。
”ど、どうして....”
詩織は、残忍に立ち去った理恵達のことを思った。
だた、目の前の事態をどうするかの方が今は、重要だった。
とりあえず、バケツの中の水をこぼす。
澱んだ水に手を付けるのは、嫌だったが、上半身全裸で、居られる訳もなかった。
汚泥にまみれた自分の服を取り出し、洗面台に運ぶ。
蛇口からの水を大量に流し、少しでも綺麗になるように濯いだ。
均整の取れた裸体のまま、高校の汚い便所で、選択する詩織の姿は、
その場になじむものでは無かったが、窓から差し込む夕日の光が、詩織の裸体にあたる姿は、綺麗だった。
”き、綺麗にならない...”
便器を掃除しているモップで汚された衣服は、そう簡単には綺麗にならない。
詩織は、必死に手を動かすが、元の色に戻る事は無く、水面に落ちる自分の涙だけが増えていた。
”こ、これ以上は無理なの....”
詩織は、変色したセーターを絞る。
便器を洗った汚水にまみれた服を着るのは、勇気が必要だったが、全裸で、廊下を歩き、自分の車まで歩くことはできな
かった。
ただ、車で学校に来ていることだけが、助けだった。
”電車じゃ無くて良かった....”
さすがに、この格好で、電車に乗る訳にはいかなかった。
”き、汚い....”
そう思いながら、濡れたセーターを広げる。
そして、観念し、濡れたセーターに腕を通す。
”冷たい....”
自分が情けなかった。夢のような生徒のための教師像が崩れていく。
”も、もう先生なんてできない....”
片腕を通し、もう一方の腕を通そうとした時だった。
「先生、汚いわね。」
理恵の声だった。
「り、理恵さん!!」
詩織はあまりの驚きで、胸を隠すこともできず、理恵を注視する。
そこには、友達たちと別れたのか、理恵一人が、詩織に、軽蔑する視線を投げかけていた。
「そりあえず、撮っておくわね。」
理恵は、そういって、写メを撮る。
「や、やめなさい。」
冷静さを取り戻した詩織は、慌てて、胸を押さえ、理恵を注意する。
「何?その態度。」
理恵が詩織の注意を軽く受け流しながら、詩織を脅迫する言葉を吐いた。
「写真、どうなっても良いんだ?」
「そ、そんな...」
詩織は、理恵の態度に絶句する。
「あ、そうそう。皆の撮った写真は、全部私が受け取って消せたから、心配しないで。」
事もなげに理恵が続ける。
「私の言うことだけに従えばいいのよ。」
高飛車な態度だった。
”何を言ってるの?”
詩織は、理恵の対応に苦慮する。
「り、理恵さん。新米だけど私は先生よ。 そんな言葉使いは、良くないわ。
それに、脅迫なんてしちゃだめ。 早く写真を消して、自宅に戻りなさい。そうすれば、この事は誰にも言わないから...」
詩織の精一杯の対応だった。
ただ、理恵は、詩織の言葉を聞いて、笑った。
「そりゃ誰にも言えないわよね? おっぱいぶらぶらさせながら、便所で、洗濯したなんて。」
まったく、詩織の説教を聴いていないかのようだった。
「そんなに言うならいいわ。帰るわよ!!」
理恵は、こともなげに、その場を立ち去ろうとする。
”しゃ、写真消させないと!”
詩織はそう思って、理恵の腕を押さえ、引きとめようとした。
「汚い!! 汚物が付いた手で触らないでよ。」
理恵が、詩織の手を振り払う。
”お、汚物....”
その通りだった。さすがの詩織も、情けなさがこみ上げる。
「あ、あなたが、やったんでしょ!」
詩織は、生徒に話すとは思えない言葉を言ってしまう。
その感情が、理恵にも伝わったようだった。
「あんた、許さないわ!!」
理恵の目に怒気がみなぎる。
「立場解ってないでしょ?」
詩織に、理恵が、最後通告のように話掛ける。
”弱気になっちゃだめ!”
詩織は、脅しに乗る訳にはいかなかった。
「そ、そんな写真誰も信じないわよ!! 好きにすれば良いわ。」
下手に出ても、付け上がられるだけだと思った。
理恵は、詩織の言葉を受け、逆に、口元に笑みを浮かべる。
打ち捨てられていた、便器掃除のモップを手に取る。
「先生、汚いから、拭いてあげる。」
そう言って、詩織の露になった胸に、汚いモップを突きつける。
「や、やめなさい。」
詩織は、そのモップを避けた。
「何避けてるのよ。 拭いてあげるんだから、胸突き出しなさいよ!」
理恵は、先生に、対する言葉とは思えない態度だった。
「あなた、何言ってるの?そんなことする訳ないでしょ?」
そういった時だった。その返答を予期していたかのような理恵の言葉が出る。
「本当に?」
理恵は、自信たっぷりに、言い放つ。
「もう一回だけよ。 次からは、お願いされたって拭いてあげないから!」
理恵は、モップを持ち直して、便所のドアを開け放った。
「ちょっと!!」
半裸の詩織は慌てて身を隠そうとする。
外に誰かいて、これ以上、見られたくは無かった。
「詩織先生?」
身を隠した詩織だったが、トイレのドアの外から、だれか、男子生徒の声が聞こえる。
”み、見られた!!”
詩織は、恥ずかしさで、確認することもできなかった。
生徒とはいえ、男性に、上半身半裸で、必死に胸を押さえている姿を見られていると思うと、生きた心地がしない。
「携帯見せなさいよ!!」
理恵の声だった。
それは、詩織に掛けられた言葉でなく、詩織は、恐る恐る視線をトイレの入り口に向ける。
「た、高橋君!!」
そこには、理恵に呼び出された高橋の姿があった。