”ど、どうしたら......”
詩織は、個室の中で思いをめぐらせる。
想像するだけで、不気味で、不潔そうな汚水を投げ込まれたらと思うと、それだけで身震いする。
「貴方たち、なんでこんな事するの?」
詩織は、女子生徒に、声を掛けた。
「単純にむかつくからよ。 男子のご機嫌取りして!しかも体使うなんて!」
”か、体使う?”
詩織は、愕然とする。
もちろん詩織は好きであんな事をしたわけではなかった。
「べ、別に、男子のご機嫌を取ったわけじゃないわ!」
詩織は、弁解するしかなかった。
「貴方達の事も、先生、ちゃんと考えてる。」
詩織の弁解は、女子生徒達は、歪んで解釈する。
「じゃあ先生! 高橋の言う事ばっかり聞かないで、私達の言う事も聞いてよ。」
詩織は、少し意図の違うことに気付くが、ここで、単純に否定はできなかった。
「き、聞けることだったら、先生やってあげるから、このドア開けなさい。」
詩織は、この場の打開に乗り出す。
ただ、女子生徒からの返答は、詩織にとって、驚くべきものだった。
「じゃあ先生。着てる服全部、こっちに投げなさいよ。」
詩織は、この問いかけに愕然とした。
「そ、そんなの無理よ。」
詩織の返答に、1人の女子生徒が噛み付く。
「異性の高橋には出来て、私達には出来ないんだ!!」
痛烈な批判だったが、別に弱みを握られているわけでもない生徒に、全裸をさらすことなど出来るわけも無かった。
「た、高橋君にも、全裸なんて見せて無いわ。」
詩織は、女生徒たちに嘘はつけなかった。ぎりぎりの線だった。
本当に、全裸になった訳ではない。
最後の砦だけは守ってきた事は事実だった。
女子生徒が、その言葉を聴いて、納得するはずも無かった。
「先生、嘘付いてないわよね。」
詩織は、その質問に、返答する。
「も、もちろんよ。」
女子生徒は、かまを掛けたようだった。
「それじゃあ、胸も触らせてないわよね。」
詩織は、先ほどとは違い、即答できなかった。
”う、嘘になっちゃう....”
「そ....そんな事、答えられないわ..」
その答え方、詩織の口調は、誰が聞いても肯定していることが手に取るようだった。
「先生、YesかNoだけでいいわ。 ていうか、この茶色の水かぶるならそれでも良いけど。」
詩織に選択権は無いようだった。
「...む、無理やりだったのよ...好きで触られたわけじゃないの。」
どうにか考えた答えだった。
必死の答えだったが、女子生徒達は笑いだす。
その笑いの渦の中の声が、詩織に届いた。
「さっきの感じだと、無理やりって感じじゃなかったわよね。」
1人の女子生徒が答える
「高橋、なんか良いもん持ってんじゃないの?」
「こいつ、脅されてるの?」
「高橋、呼んで、あいつもやっちゃう?」
この子達にしてみれば、お遊びの笑い話だったが、個室に閉じ込められた詩織にとっては、
ただ事でない会話の内容だった。
”た、高橋君だけだって大変なのに....この子達に知れたら...”
詩織は追い詰められていた。
この女生徒たちに掛かれば、高橋は、簡単にあのデータを渡してしまうに違いなかった。
それこそ、あのデータをこの子達が見たら、この程度ですまないことは容易に想像できる。
詩織は、意を決したように、女子生徒たちに悲痛の声を挙げた。
「あ、あなた達の言うことも聞いてあげるから、ここから出しなさい。」
詩織の言葉に、笑い出していた声が聞こえる。
「本当? うれしいな。」
「先生! 早く服を渡しなさいよ。」
その声に、詩織は、従うしかなかった。
詩織は、先ほど、高橋に捲り上げられたセーターを個室で脱ぐ。
「ほら早く!!」
その間も、嘲笑は止まなかった。
”私...どうなっちゃうんだろう..”
詩織は、一瞬ためらうが、そのセーターをドアの上に掛けた。
詩織は、心細くなり、上半身ブラ1枚の胸元を、誰が見ている訳でなかった、必死に腕で隠す。
「でてきた!!」
ドアに掛けられたセーターは、直ぐに、女子生徒達に取り上げられる。
「先生!次はスカートね。」
ヤクザの様に、要求は、とどまることを知らなかった。
「ちょ、ちょっと何処まで取り上げるの?」
意を決し、セーターを渡したにもかかわらず、要求は、跳ね上がる。
「別に、見てる訳じゃないでしょ? それとも高橋呼んでくる?」
詩織の弱点を見抜いているかのような返答だった。
「そ、そんなこと言わないで..これで最後よ。」
詩織は、個室の中で、スカートを脱ぐ。
薄暗い便器の前で、下着姿でいることに、躊躇するが、仕方なく、スカートをまた、ドアに掛ける。
そのスカートもすぐに、取り上げられた。
「ちょっと、見てみようよ!」
そんな声が、スカートを渡すと、外で響く。
「ガラン..ガチャ」
個室の外からの音が、詩織の耳に響く。
”な、なにしてるの?”
見えない恐怖が、詩織を襲った。
個室の外では、女子生徒たちが、清掃具入れに入っていた小さ目の脚立と取り出して、詩織の個室の前に立てかけている。
その脚立に、1人の女子生徒が、上る。
「見えた!!」
初めに覗いた女子生徒は、理香だった。
「り、理香さん...」
詩織は、目のあった理香の名前を呼ぶ。
そして、注意を促そうとしたのだったが、躊躇してしまった。
幾ら生徒とはいえ、下着姿では、何も言えなくなってしまう。
それ以上に、さげすむ、理香の視線から、裸の体を隠すことぐらいしかできなかった。
「エロ女。」
理香は、一言投げつけ、脚立を降りる。
”せ、先生に向かって!!”
詩織は、理香の言葉に、憤慨するが、その理香の言葉は、その他の子達の爆笑を誘った。
理恵が、脚立を降りると、次々と、順番で、詩織の下着姿を確認するように、女生徒たちが、脚立に上った。
まるで、動物園のさるの様に、詩織は、個室で、身を固めるしかできなかった。
”み、見ないで!”
詩織は、見世物の様に、眺めにくる子達を避けることもできない。
「やめなさい...」
つぶやくことが、精一杯だった。
そのつぶやきも、否定される。
最後の一人が、楽しそうに、詩織を眺める。
その際に、つぶやく詩織に、言葉を投げつける。
「ちょっと、下着になるんでしょ? パンストも渡しなさいよ。」
脚立に、仁王立ちになりながら、詩織に命令する。
「早く!!」
詩織は、一瞬、睨むように、目を合わせるが、あきらめるしかなかった。
生徒に、脚立で、覗かれるままに、パンストを脱ぐしかなかった。
狭く薄暗い個室で、詩織は、屈みながら、パンストに手を掛ける。
”なんでこんなことに.....”
そう思っても、許してもらえる訳も無く、詩織は、ショーツと、ブラだけの格好に、身を落とすことしかできなかった。
男が見れば、垂涎の姿だったが、理恵たちにしてみれば、嫉妬と、憎悪の対象でしかなかった。
パンストを脱いだ詩織に掛けられた言葉で、詩織は余計侘しくなる。
「エロ教師。早くそれ渡しなさいよ。 どうせ、授業中も、脱ぎたくて仕方なかったんでしょ!」
理恵たちの笑い声の中、パンストを詩織が、ドアに掛ける。
「お、お願い、脱いだんだから、ここから出して!」
詩織は要求どおり、許しを求める。
その答えは、帰ってこない。
変わりに、理恵の声がした。
「先生! スカートと、セーターちょっと汚れてるみたい。」
理恵が言っている、その意味が、詩織にはわからなかった。
「汚れてないわ。」
詩織が答えるが、理恵は、納得していなかった。
「ここ、ちょっと汚れてるでしょ?」
理恵は、詩織の衣服の一部を指差す。
ただ、ドアを挟んでいる詩織に、その場所が見える訳も無く、見えたとしても、汚れなど無かった。
「少しぐらい汚れても良いから、出して!」
詩織はそう思った。
「駄目よ! 女として汚れた服、着るのなんて。私が、洗ってあげる。」
”洗う?”
詩織がそう思ったときだった。
詩織の耳に、先ほどの汚れた水が入ったバケツをかき回す音が聞こえた。
「何してるの! やめなさい!」
詩織が、そういった時だった。
「あーあ。セーター茶色になっちゃった。」
理恵が、わざとらしく詩織に聞こえるように、大声を出す。
「茶色? 灰色って感じじゃない?」
受け答えをする子の後で、嘲笑が広がる。
”バケツの中に、服を入れられちゃった.....”
詩織は呆然として、自分のセーターが、汚濁している様子を想像してしまった。
”ど、どうするのよ...帰れない...”
詩織は、恐怖で、自分の膝が震え、立っていられず、思わず、壁に寄りかかってしまう。
「どうしたの?先生。」
その言葉の方向に、はっとして、詩織が目を向ける。
脚立に戻った理恵が、ドアの上から、倒れこんだ詩織を見下ろしていた。
「あ!!」
詩織の目に、自分のセーターが、映る。
そのセーターは、まだ汚れていなかった。
「へえ。先生これ汚されたら困るんだ?」
理恵が、わざとらしく、詩織のセーターをひらひらさせる。
”よ、良かった。”
詩織は何はともあれ、安堵した。
「こ、困るわ。先生。 汚さないでね。」
詩織は、理恵を怒らせないように、優しく受け答えする。
下手に出た詩織に、理恵は、相変わらず、詩織の痛点を突いてくる。
「わかったわよ。 汚さないって約束するから、代わりに、ブラ頂戴。」
理恵も、優しく微笑みながら、詩織の膨らんだ胸を指差した。