今朝は、時間より1時間以上も早く詩織は、目覚めた。
「今日から、がんばらないと。」

大学では、文学部に進学し、どうにか卒業した。
通常科目以外に教職の過程は、面倒であったが、教師になれると思えば、それほどの苦労でもなかった。
苦労は、大学4年になってからだった。

一般企業の内定は、他の女友達より、簡単に取ることができていた。
周りは、それを羨ましがっていたが、詩織は、成績が良いだけでなく、
面接官を圧倒する美貌にも恵まれていたからかもしれない。

ただ、詩織は、学校の教師になりたかった。
教師の資格は、取得できたが、昨今の少子化で、教師の枠は少ない。
既に教師になっている者ですら、担任職を外されてしまう状況であった。

そんな最中でも、どうにか、詩織は希望の教師の枠、それも都立高の枠を、得ることができた。
ただ不安なことは、都立でも最下レベルの高校であった。

今日は、その学校に初めて通う日だった。
詩織は、地味目のスーツを身に纏い、学校に登校した。
学校で、職員室に入る。

「おはようございます。」詩織が同僚に声を掛けた。
既に、オリエンテーションは、終わっており、ある程度顔なじみになっていた。
「詩織先生、おはようございます。」先輩から先生と呼ばれ、詩織は、照れくさかった。

「今日から、生徒の授業を受け持ってもらうことになっていましたね。」
教頭が、詩織に声を掛ける。
「はい。がんばります。」詩織は、緊張と希望に燃え答えた。

「しっかりお願いしますね。」教頭は、詩織を鼓舞するように言った。
「ありがとうございます。準備しますので。」詩織は、そう答え、自分の席に戻った。
詩織は、さらに緊張した面持ちで、授業の準備に入った。

そのころ.....

「今日から、あの新任だぜ。」 3年A組の高橋が、周りに声を掛けた。
「めちゃ、可愛くねえ?」 周りの生徒が答える。
「さっき職員室に入っていったの見ちった。」 高橋は、その言葉を聞き、

「見に行こうぜ!」と言って、友人と2人で教室を抜け出した。

ちなみに、この高校は留学経験者を優遇しており、全生徒20歳以上だった。

詩織は、そんな事は露知らず、緊張を高めていた。
「私、しっかり授業できるかしら...」
準備は万全にしていたが、緊張は、高まる一方だった。

”キュゥ” 詩織は、緊張からくる腹痛を感じた。
「授業前に済まさなきゃ。」
詩織は、職員専用のお手洗いに向かった。


「し! いたぜ。」高橋が、もう一人に声を掛けた。
「すげー可愛い。」思わず素直な気持ちがでる。
「おい、おい、便所に入っていったぜ。」高橋は、詩織の入っていった職員トイレに近づく。

「まずいだろ。」もう一人が高橋に言った。
「じゃあ、教室に戻れよ!」 高橋はにやつきながら、さらに続ける。

「職員トイレって、こんな目立たないところにあるし、今朝は、女の教師って、あのデブコンビしかいないはずだよな。」
高橋は、校庭で、今度の学園祭の準備をしている2人の女教師を指差した。
「ま、まじ?」片割れはそう言いながらも、興味深々だった。