「だた、薬がもう残り少ないんだ。」
堀切が、今の状況を説明する。

「おそらく、夕方には先ほどと同じような禁断症状が現れる。次回の分はなんとかあるけど、今日の夜の分は...」
眉間に皺を寄せる。
「新しく調合すれば、間に合います!」
皐月は、必死だった。
あの禁断症状を押さえる事など、できる訳も無い。

ただ、堀切の言葉が淀む。
「材料が...」
そう、この薬品の一部には、高価なこの研究棟でも責任者の許可を取らなければ、入手できない材料があった。
部長に報告すれば、この成果は部長の物になってしまう。
ただ、そんな事も言ってられなかった。

「部長に相談するよ...」
堀切はそう言った。
それしか無かった。

「すみません。」
皐月は、自分が悪いわけでもなかったが、謝っていた。

「行ってくる。」堀切はそう言うと、部長の元に向かうため、研究室を後にした。
それが、皐月にどんな結果をもらたすか、その時は二人は理解していなかった。

10分ほどで、堀切は戻ってきた。ただ、事もあろうか部長も一緒だった。
部長の赤井は、研究室に入ってくると、研究資料を確認しはじめる。

「これは画期的な薬だな....禁断症状が出無くなれば大発見だよ。」
赤井は堀切に話す。

「禁断症状はどのくらいだ?」
赤井は皐月の方を見て確認する。

「か、かなり強いです...ただ、薬の投与数秒で収まりました。」
皐月が返答する。研究者としての返答だったが、赤井は顔をしかめた。

「数秒? どうやって投与したんだね。」
赤井は薬の効果があまりに早いため、変な顔をする。

「....」
そこで皐月は返答に窮してしまった。
堀切が、それを察したのか横から代弁する。

「一回目の投与時に、直腸投与を行ったため、禁断症状発病後には、膣内に噴霧投与を行いました。」

ただ、その返答を聞いた赤井は、二人を交互に見比べる。

「君が、彼女に?」
堀切は、赤井が変な想像をし始めた事に気付く。ただ、もう隠す事はできなかった。
「...す、すみません。」
堀切は赤井に謝りながら、赤井の質問に肯定した。

「研究職にありながら、ふしだらな...堀切君。懲戒物だぞ、覚悟しろ。」

「え!」
堀切は赤井の言葉にたじろぐ。確かに咎めはあると思っていた。
研究の成果も赤井主導になる事も。
ただ、懲戒までとは思っていなかった。

しかし、赤井が役員にする、事の報告次第では、そうなる事も事実であった。

”堀切さんが首!!”

皐月はあまりの事に驚いてしまった。
「く、首は酷いんじゃないですか!!。」
皐月は思わず、赤井に叫んでしまった。

赤井は叫んだ皐月をじろりと見る。
「君が責任取るのかね?」

赤井は自分を遮った皐月に怪訝な表情を向ける。
「ほ、堀切さんが首にならないなら....私が責任をとります。」
皐月は、覚悟を決めていた。

”私...堀切さんの事、こんな好きだったんだ...”
口にした自分自身に驚いていた。
ただ、赤井は皐月のその必死な表情を見て、”面白そうだ”と思った。

「堀切。早く薬品を調合したまえ。試料の許可は出す。
確か、依存性が高いんだったなぁ。薬品を作ったら、堀切課長は私の研究室で待機したまえ。」

赤井はそう言うと、皐月を舐めまわす様な目付きで眺めた。
”な、何!!”

皐月は赤井の口ぶりと、視線で嫌な予感がした。
堀切も、赤井の表情で何が起きるのか理解できた。

「わ、私も立ち会います。」
堀切が、皐月と赤井を二人だけにしない様に赤井にお願いするが、直ぐに否定された。

「皐月君が、責任を取るって自分でいったんだよ! 課長は、辞めるのかな?
...まさか、私が同意も無しに、変な事を皐月君にするとでも言うのかね。」

脅迫に似た返答だった。
堀切も、それ以上の拒否ができなかった。

それから、しばし時が経つ。

3人とも無言だった。


「薬品が完成しました。」
堀切が、薬品を完成させていた。
完成させた薬品を赤井に手渡す。

「御苦労。堀切は私の研究室で待機する様に。」
赤井はそう言うと、躊躇する堀切の背中を押すと、むりやり、研究室から追い出した。
そして、研究室の鍵を閉めると、皐月に対峙した。

”な、なにされるの...”
皐月は恐怖が全身に駆け巡った。

そんな皐月の恐怖を感じているのかいないのか、赤井は無造作に、堀切が薬品を調合している間に準備していた物から、一枚の紙を取
り出すと、皐月に手渡した。

皐月はおずおずと、その紙を手に取る。
紙には、”学用患者 同意書”と記載されている。
ただし、中身はほぼ空白だった。
にも関わらず、最下部に、”上記8項目の条件に同意します”とだけ書かれていた。

「まあ、今回の事は内密にしないとならんがね。薬品の製造過程で、中毒を起こしていたなんて知られるとまずいからな。」
赤井はそう言って言葉を続ける。
「8項目もあれば、なんか合っても対応できるだろう。早く同意書にサインしたまえ。」

白紙の同意書だった。

「こ、これじゃあサインなんてできません。」
皐月は拒否をする。ただ、断る事もできない立場とも知っていた。

「じゃあ、責任は取れないってことだね。」
赤井はずるそうな表情をする。

皐月は後には引けなかった。 もうサインをするしか堀切を救う手段が無いと短絡してしまっていた。
ペンを持つ手が震える。
それでも皐月は、白紙の学用患者 同意書にサインをしてしまった。

赤井は同意書を受け取ると、また態度が横柄になっていく。
「これさえ受け取れれば、準備完了だな。」

赤井は皐月を見据えた。
「見れば見るほど良い女だな。」
その言葉は、もはや製薬会社の部長の言葉ではなかった。

「ぶ、部長!!せ、セクハラです!!」
皐月はあまりの豹変に驚いて声をあげてしまった。

ただ、赤井はまったく動じなかった。 
「セクハラ? 薬物の依存度を計っているだけだよ。無理強いはしないから安心したまえ。」
赤井は卑怯な笑いを作っていた。

「とりあえず、裸になって、そこの床に土下座したまえ。『本日はよろしくご指導ください』ってな!」

皐月を人と扱っていないような言葉だった。
「な、何をおっしゃっているか解りません!」
皐月は赤井に絶対の拒否をした。

立ち尽くす皐月を、赤井は舐めまわす様に眺める。
「やりたくないのは解っている。やりたくなったらやればよい。」

赤井は余裕だった。
そして、皐月に見せびらかす様に、小分けされた試験管に収められた薬品を見せつける様に振った。

”ま、まさか!!!”
皐月は、赤井の魂胆を今さらながら認識した。

「く、薬の中毒症状を弄ぶ気ですか!!!!」
皐月は、自分の顔面から血の気が引くのが解った。

”さ、さっきは、堀切さんだったから...堀切さんだからお願いできたのよ!!”
皐月は中毒症状の苦しみを思い出してしまっていた。

「弄ぶ? ひとぎきの悪い事を言う。土下座をしたくなったらしなさいって言っているだけで、強要なんてしていないがね。」
赤井は、そう言いながら、時計を見た。

「そろそろ、土下座したくなるぞ。お前が敢えて、薬の話をするからな。早まるはずだよ。」
赤井は、これ見よがしに薬の瓶を振る。

”...あっ”
皐月は、自分の中毒症状が発生している事に気がついてしまった。

「ひ、卑怯!」
皐月は赤井に叫ぶ。

”屈しない....”
皐月は赤井の前に立ちすくんだまま、それでも目の前の薬を凝視してしまっていた。

「...」
「...」

また、二人の間を無言の時間が流れた。
ほんの五分程度であったが、皐月には、永遠の時間にも思える。

”ほ、欲しい。”
薬が欲しかった。
皐月は自分の額に脂汗がにじむ感覚を覚えた。

”ゆ、許せない....”
皐月は心でそう思いながらも、赤井に声を掛けるしかなかった。

「く、薬ください。」
立ちすくんだまま、皐月は赤井にお願いしてしまっていた。

「5分も我慢できないのか!」赤井は笑った。
「土下座したくなってきただろ?」

赤井は煽った。
”ひ、酷い....”
皐月にはどうする事もできなかった。到底、人間の理性でコントロールできる欲望ではなかった。

皐月は、赤井の足元に膝を折る。
”お願いすれば良いのよね...”
皐月は、赤井に土下座していた。

「く、薬ください....」
皐月の全身に、屈辱の感覚が流れる。
”悔しい....”

土下座の格好の皐月に、赤井は声を掛けた。

「裸になって、『本日はよろしくご指導ください』 だったよな。」
赤井は凌辱を開始した。