「何とかならんのか.....」
大善署長は、会議室で、苦虫を潰した様に言い放った。

おそらく、佐藤組の仕業でないかと思われたが、確証の物が無かった。
ただ、今回の組織の被害者は3名に達していた。

しかも20前後の若い女性だった。

事件は、数ヶ月前に一人目が発覚した事を発端としており、
被害者全員が、全裸で人通りの多い交差点に放置される事により発覚していた。

命に別状があるわけでは無かったが、その後の聞き取りを実施しても、
被害者には、一切の記憶が無かった。

そのため、犯人の特定が何一つできない状況であった。
裏の情報で、佐藤組で何かしらの薬物を完成させたとの情報があったが、
警察が、裏情報で逮捕状や捜査令状を取ることもできなかった。

「山田警部と、佐藤警部補のチームも捜査に参加しろ。」
大善署長は、署員の全てを捜査に当たらせる指示をする。
もう、他の事件などと言っている場合ではなかった。

「交通課も、市民課も捜査に当たらせるのですか?」
副署長が確認するが、猫の手も借りたい時だった。

そんな中、麻美だけが、やることも無くデスクに座っている。
「署長、私は....」

麻美の問いかけに署長が振り向く。
「坂下警視は、私どもを監視いただければ結構です。」

署長も警視であったが、麻美に敬語を使う。
ただ、何もしないで座っていてくれといわんばかりだった。

麻美はまだ23歳だった。
ただ、国家一種組み、様はキャリア入庁だった。
しかも、父親は、前警視総監であり、入庁半年で警部になり、今年から警視に昇進していた。

ただ、当の本人である麻美は、その腫れ物を扱う様な周りの感じが嫌だった。
”私だって犯人を逮捕したいんだから!!”
麻美は、まだ社会を知らないお嬢様でもあった。

「私も捜査しますので、資料をください。」
麻美は、署長に依頼する。

大善署長は断ることもできず、捜査資料の入ったパソコンのIDを麻美に渡すしかなかった。
「坂下警視は総員の監督をお願いしますよ。」

念のため、大善署長が釘を刺す。
余分な事をされては困るのだった。

ただ、その釘が麻美には納得が行かなかった。
「署長、私は私で捜査しますから!!」
これが若気の至りと思い知ることになるとは、麻美は、まだ知らなかった。

それから数時間、麻美はパソコンと格闘していた。
署長や署員は捜査で外出し、麻美だけが署内に取り残される。

”私が逮捕しちゃうから....”
必死に捜査ファイルを閲覧する。

もちろんそのファイルだけで犯人を特定することなど出来るわけも無かったが、
大善署長は、ミスを犯していた。

”極秘ファイル??”
麻美はセキュリティーの掛かった重要ファイルを発見する。

それは、一般捜査では無く、裏の情報ファイルであり、通常閲覧することの出来ないファイルだった。
大善所長のミスは、これだった。

このファイルは、署長だけが閲覧できる極秘裏情報であったが、麻美もまた、位だけは警視であり、
形式上、署長を監視する役目だった。

麻美は自分のパスワードを入力するとファイルにアクセスをする。
そこには、佐藤組の裏の事務所の場所、実は外務事務次官である近藤の自宅の住所と、
発表されていない監禁されているだろう女性の名簿が乗っていた。

”許せない!!”
麻美の正義感が奮い立った。

”事務次官とあろう者が...”
そのファイルには、多くの行方不明者が、近藤の行き付けの店で起きていることを示していた。
証拠は無かったが、3名の被害者の共通点は、記憶が無くなる前に、この店で働こうと募集に応募している子で
あることが極秘ファイルに記載されていた。

警察も必死に監視しているようであったが、今のところボロも、
証拠が無く、踏み込むこともできなかった。

”潜入調査....”
麻美は日本の法律では許されていない捜査を思いつく。
”そうよ。法律で許されていないから、相手も油断する。”

麻美はそう思った。
危なくなったら、応援を呼べば良い。
自分で出来るところまでやってみようと、簡単に思っていた。



疑いの店である近藤の行き付けの店は、銀座の並木通り沿いの店だった。
麻美は終業後、その店に向かった。
先ほどまでに、ネットでそのクラブのレディー募集の案内の情報を得ていた。

店自体は、如何わしい店ではなく、銀座であれば、よくある飲み屋だった。
麻美は銀座に着くと店に電話を入れる。

「あの。募集の広告を見たんですけど...」
潜入は、簡単に行きそうだった。
「お店の前の喫茶店ですね。」

店のママと名乗る女性が、喫茶店を指示した。
麻美は、言われるがまま、喫茶店に向かう。
相手が、女性という事で、なんとなく安心した。

そして、喫茶店でママと名乗る女性と落ち合うと面接を開始する。
ママは、自らを紗江子と名乗った。

「麻美さん想像していたより可愛いわね。 いつからでも仕事できるわ。 時給は2000円。」
普通のバイトの様な面接だった。
「あっはい。2000円ですね。」

麻美は不審がられない様に適当に返答する。
「麻美さんは、お酒のお仕事って経験ある?」
紗江子もまた特別怪しいとは思えなかった。
「すみません。初めてです。」

麻美が答えると紗江子は驚いた顔をする。
「初めてなの?」
初めての子が応募してくるケースは銀座では少なかった。
多くの子が、渋谷や新宿で経験を積んだ子が多かった。

”不自然??”
麻美は不審がられない様な言い訳をその場で考える。
「じ、実はお金が必要で....」

麻美のこの返答が潜入捜査に大きく影響する。

紗江子はその言葉を聴くと、表情を少し変える。
「麻美さん。実はね。内緒なんだけど、出張でお酒のお相手をする仕事があるの。」

紗江子が話始めた。
”き、来た!!”
麻美はそ知らぬ表情をしながら、紗江子の言葉を熱心に聴く振りをする。

「お金...たくさんもらえるんですか?」
金に興味を示した様に返答する。

「もちろん、お客様に気に入られる必要があるけど、麻美さん綺麗だから大丈夫よ。」
紗江子も麻美の乗り気に誘われる。
「一晩で100万円。」

それは常識をはるかに超えた金額だった。
「100万円も..」
麻美は念を押すように確認する。
もちろん、警視である麻美の月給はそれ以上だったが、1日の額としては大きすぎる。

”何かあるわね..犯人に繋がる何か....”
ただ、幾ばくかの不安もあった。

「ただ、お酒のお付き合いをするだけですか?」
麻美は紗江子に確認する。
「それは相手次第ね。  もちろん100万円なんだから、麻美さんが不安に思ってる体の要求もあるかも知れ
ないわ。」

それは、売春も含んだ違法の行為だった。

「嫌だろうけど、100万円を取るか、やめるかね。 お相手は身分もある人だから安心して。」
紗江子は麻美に説明していく。
「国のために働いている官僚よ。 どうするかは麻美さん次第....」

麻美は悩んでいた。
さすがに潜入捜査とはいえ、そんな事をする気は微塵も無い。
ただ、相手の確認さえできれば、買春の別件逮捕で犯人の特定ができるかも知れなかった。

”相手は官僚、顔だけ見れれば後で確認できる...顔さえ見て逃げれば良いんだ。”
麻美はそう思った。

「やらせてください。」
麻美は紗江子の提案に乗った。

「じゃあ、気が変わらないうちに、今日は大丈夫? もちろんお相手のスケジュールにも拠るけど。」
紗江子が麻美に確認する。
「き、今日....はい。」

一抹の不安を覚えたが、やると言った以上、麻美は同意した。
すると、紗江子は携帯を手に取る。

「新しい子が応募してきたの。今晩いかが?」
「大丈夫そうね。 それでは連れていくわね。」

相手が誰だかわからないまま、麻美の商談は終わっていた。
「麻美さん行きましょう。」

言われるがまま、喫茶店を出ると黒塗りの車が前に停車していた。
「乗って。」
紗江子が麻美に車に乗るように指示した。

”怪しすぎる....”
麻美は警戒するが、ここで諦めては何も証拠が掴めなかった。

恐る恐る車に乗り込む。
「じゃあよろしくね。」
紗江子も同乗すると思っていた麻美は唖然とする暇も無く、ドアを閉められると車が出発した。

「ちょ、ちょっと待って!!」
麻美は運転手に止まるように言う。
しかし、運転手はそ知らぬ振りだった。

その麻美に答えたのは、助手席に座っていた誰から見てもやくざまがいの男だった。
「あきらめな ねえちゃん。 もう売春請け負ったんだろ? いっそのこと警察にでも自首しに行くか?」

”売春を請け負った??”
麻美は潜入と言えども法律を犯したつもりは無かった。
「ば、売春なんて請け負ってません。」

麻美は必死に返答する。ただ、やくざまがいの男は、にやっと笑うだけだった。
「紗江子が引き渡してきたんだ。 売春の話もしてるはずだぜ。」

”....”
麻美は事態が、自分の思惑とは違った方向に進んでいくことに戸惑う。
”逃げたほうが良い...”
本能が訴えかけてくるが、とらわれている女性達のことを思うと逃げることなどできなかった。
ましてや、違法である潜入捜査をしようとしているのである。ある程度の結果も残さなくてはならなかった。

そんな事を考えている最中に、やくざまがいの男が、助手席から無理やり後部座席に移ってくる。
「な、何!」
麻美が驚いた時に、男は麻美の隣に体を移していた。

「それにしても良い体してんじゃないか。」
男は言いながら、麻美の太ももに手を伸ばして来たのだった。

「や、やめて!!」
麻美が男の手を振り払う。
お水の面接を受けるつもりだった麻美の服は、普段なら選択しない座ってしまうと、
膝がかなり露出する派手目のタイトスカートだった。

「触られたいんだろ?」
嫌味のような言葉を吐きながら、男は振り払われた手をスーツの内ポケットに差し込むと、札束を取り出す。
銀行の封印がされたピン札の束は、100万円の束であった。

「これ欲しいんだよな? どうなんだよ。」
男は100万の束を麻美に渡すために、麻美のスーツの内ポケットに差し込もうとする。

”受け取らないと...”
麻美にとって見れば100万円でこんな事をさせるつもりは無かった。
ただ、受け取らなければ怪しまれると思った。

”も、目的地さえ確認できれば...”
麻美はこの車の目的地が、佐藤組か、事務次官の息の掛かった施設と言うことを確認できるところまでは、
我慢しようと思った。

”我慢....”
麻美は自分のスーツのポケットに100万円が入れられる感覚を覚える。
男はわざとらしく札束の角を麻美の胸に当てて来ていた。

麻美の背中に悪寒が走るが、嫌とも言えなかった。
見ず知らずの男にもてあそばれるように自分の胸を変形させられる。

「...」
麻美は、拒否することもできず、身をよじって少しでも避けようとするしかなかった。

「受け取ったよな。」
男が麻美に確認する。

麻美は悪寒に包まれながらも、頷くしかなかった。

「触られたいんだろ?」

男は脂汗を噴出しながら、麻美に再度同じ質問を浴びせた。

”もう無理.....”
それでも、麻美は、自分の本能を必死で抑える。
全裸で交差点に捨てられていく被害女性の事を思えばこの程度で潜入捜査をあきらめる訳には行かなかった。
もちろん、署長にまた嫌味を言われるのも真っ平ごめんだった。

麻美は、自分を弄ぼうとしている男に向かって頷く。
それを待って居たかの様に、男の手が、容赦なく麻美の形の良い胸をブラウスの上から、握りつぶすように揉み
上げた。

「こんな可愛い顔して、金さえ渡せば乳揉ませるのか?」
男は麻美の胸をまさぐりながら、麻美をさらに貶めていた。

”ひどい....”
まだ好きな男にもここまで露骨に胸を触らせたことなど無かった麻美が、拒否することもできず、胸を自由にさせることしかできない。
 


ただ、男の指はそれだけでは無く、ブラウスのボタンを外そうとしていた。