”何も聞こえない!!”
加奈は、やつの声を無視して、自宅に駆け込む。

「加奈、帰ってきたの?ずいぶん遅いわね。」
ドアを開ける音に気づいたのか、母親が台所から声を掛けてくる。
「パパも心配してるわよ。」

両親の心配をよそに、
「忙しいの!!」
加奈は母親の声を振り払う様に言い放ち、二階の自分の部屋に駆け込んだ。

”こ、ここまで来れば....”
加奈は少し安心し、ベッドに腰掛けた。
やつの最後の言葉が気になったが誰に見られる訳でなかった。

”どうしよう...”
加奈は、ベッドに腰掛けながら、これからどうするか考える。
何時もは、部屋に入ると直ぐに楽な格好に着替えるのだったが、なんとなく嫌だった。

一旦、着替えに目をやるが今の服を脱ぐ気にはならなかった。
ボーっと時間だけが流れていく。

”あんな本を読んだお陰で...”
後悔してもしきれる事でなかった。
駅のロータリーで、四肢の自由を奪われたというものの、自分を弄ってしまった記憶がよみがえる。

見知らぬ人達の好奇と蔑む視線がいまだに加奈の心に残っていた。
彼らは加奈が操られていた事とは思っていないはずだった。

”あれは無理やりだったの...”

自分を納得させるように言い聞かせた時だった。
『タクシーの中では自分の意思でこねてたろ?』
おぞましい声が加奈を襲った。

”ち、違う!!”
加奈は否定する。
「あなたが脅したからでしょ?」
思わず、一人しか居ない自分の部屋で加奈は声を上げていた。

『そうだっけ?どっちでもいいじゃん。』
声の主は、本当にどっちでもよさそうな声を響かせながら、催促した。
『脅してあげるからさあ。さっきのオナニーの続きやってよ。』

身勝手な要求だった。
”嫌よ。”
加奈は、強気に否定した。

これ以上、付け上がらせる訳にはいかなかったし、誰も居ない自分の部屋にいる。
”ここでこの声の主と対決しなきゃ”
と思った。

『だから脅してあげるって言ってるのに...』
声の主はあきれた様な声を響かせる。
『言うこと聞かないと、全裸のまま、片足だけの逆さづりにして、華厳の滝にぶら下げちゃうぞ』
言ってる本人も可笑しくなったのか最後は苦笑しながら、加奈を脅した。

”馬鹿じゃないの?”
加奈は、相手にすることをやめる。
どうやったら、この契約を終わらせられるかを考えることにした。

「質問があるの....」
加奈は、若干の猫なで声を出して模索始める。
「貴方を満足されられたらって..抽象的すぎて。別にお願い叶えてくれなくて良いから早く終わりにしたいんだけど..どうしたら良いのかしら?」

加奈は、脅しを相手にすることなく尋ねた。
ただ帰ってきた返答は、唖然とする返答だった。

『そうだな...10年ぐらいお遊びに付き合ってくれれば満足するかな。』
「じゅ、十年!?」
あまりの返答に加奈は聞き返してしまった。

”ありえない....”
加奈はこのいじめにも似た羞恥の時間が、10年も続くことなど想定もしていなかった。
”満足...満足...”
加奈は、打開策を必死に模索する。駄目もとで勝負することにした。

「今日だけ言うこときくわ。 無理やりじゃなくて何でも..その間に満足してよ。」
加奈は、時計に目をやる。 今日は、あと数時間。
それくらいなら、この先ずっとこの男にまとわり付かれるよりましと思った。

『んんん...』
やつは悩んでいるようだった。
”実体無いくせに悩めるんだ...”

加奈は意外に人間ぽい実体のないやつをさらに追い詰める。
「さっきの続き..してあげる。」
顔から火が出そうになるほど恥ずかしかったが、そんなことは言っていられなかった。

『わ、わかった。ただ、今から24時間。』

”今日は、2時間ってばれちゃったか...”
加奈は少し不安になった。 24時間..耐えれるか。

それでも10年よりましだった。
「み、みんなの前とかなしだよ...」
加奈は、恥ずかしそうに答える。

またロータリーで自慰しろなんて言われたらこの町で生活できなくなると思った。
ただ、その思考まで読み取られる。

『わかったよ。後で、後ろ指さされるような事はしない。 それで良いか?』
加奈は少し落ち着く。
少し恥ずかしいかも知れないけど、周りに知られなければ我慢できると、思った。

「いいわ。」
加奈は、頭の声に返答した。

『じゃあがんばるか。』
加奈の頭にその声が響いたと同時に、目の前に白い閃光が起きる。
信じられないことに、その閃光が何かを形作りはじめていた。

「きゃ!ちょ、ちょっと何!」
加奈は目の前で起きる現象に我を忘れて見入ってしまった。
光は少しづつ落ち着き始める。

加奈の目の前で一体の人間が出来上がり始めていた。
加奈よりもかなり身長の高い男性が現れる。
もちろん本物の人間と同じではなく、なんとなく透明感があり、なんとなく光っていた。

『1時間ぐらいは保つかな...』
加奈の頭の中にやつの声が響くと同時に今度は目の前の男もしゃべっていた。
「あ、あなた...嘘。」

加奈は目の前に現れた人間に見入ってしまった。
『俺様でも実体化はなかなかうまくいかないもんだ。』
なにやら男は呟いていた。

加奈にとってはそんな事どうでも言い事だった。
「あなたが....あなた?」
日本語が変であったが、イメージしていた男とまったく違った風体の男に驚きを隠せなかった。
恐ろしいほど加奈のタイプだった。
それは目を合わせると背筋に衝撃が走り、抱きつきたくなるほどだった。

その驚きを男も察したようだった。

『術者もあんただから、外見はしょうがないでしょ?半分はお前の理想が反映されちまう。』
男はため息交じりに加奈に話す。
『惚れる心配はない。中身は俺なんだから』

加奈は憎らしそうに男を眺めながら、頬を赤らめてしまった。
”私のタイプだって事もばれてる..”
そう思うと悔しかったが、どこか嬉しい気もしてしまった。

ただ、そんな淡い恋心のような物は簡単に崩れた。
『ほら、オナニーしてみせろ』
ベッドに腰掛けた加奈の足元にすがすがしい表情をした王子様がヤンキー座りをする。

”中身は元のまま....”
加奈は、理想の彼がヤンキー座りをしながら自慰の命令をしてくることで、再認識させられてしまった。
『ほら、こっちは時間がないんだよ。自分からやるって言ったろ?』
理想の彼は貧乏ゆすりまでし始めた。

”どうにでもなれ!”
加奈は約束どおり、ベッドの上で自分のスカートを捲り始めた。
白い太ももが現れ、男からは白いショーツが見え始めた。

加奈は右手を伸ばし、自分の股間に指を這わせようとする。
ただ、どうにでもと言っても他人の前であり、ぎりぎりの所で止まってしまった。
上目遣いに、”やつ”に視線を向けた。

”ちょ、ちょっとやだ...”
やつは、若干拡げた加奈の膝の中まで頭を入れそうなほど近づいていた。
近くで見られる事も恥ずかしかったが、好みの顔が自分が思っていたより近づいていたからだった。
思わず見とれてしまうほどの顔が、自分の股の中心を見つめていた。

この顔に見つめられながら、自分がオナニーすることが、これほど恥ずかしいとは思わなかった。
”カッコイイ...”
思わず思った時だった。

『ありがとよ。』
股間から、やつが返答した。
実体を持っても、加奈の脳裏で思った事まで知られてしまっているようだった。

「心!心を覗かないで!!」
こんな酷いことを命令している相手に一瞬でも好意を持ってしまったことを知られたくなかった。
『じゃあカッコイイなんて思わなきゃ良いだろ?  聞きたくないのに聞こえちゃうんだよ!』

加奈は露骨な言われ方に顔を赤らめてしまった。
ただ、やつはそんな事にはお構いなしの様だった。
『ほら早くこの筋っぽくなってる所擦れよ。』

加奈の膝の中にうずくまりながら、ショーツの皺を指差した。
”今日の我慢...”
加奈は、ドキドキする気持ちを抑えながら、言われるがまま、指を宛がった。

”こんな姿見て何が楽しいのよ!!!”
怒気と羞恥をこらえながら、加奈は、ショーツを摩った。
その摩っている指の数センチのところまでやつは、顔を近づけていた。

『染み出てきたぞ。』
やつの顔は、少女漫画の主人公のように整った顔立ちだったが、少女漫画では見ることのないほどにニヤケながら、加奈の股間を凝視しながら、加奈の体の変化を描写した。

「見ないで!!恥ずかしいでしょ!!」
加奈は拡げた膝の間にいる男に反論した。
良く見ると、やつの体は、透けている気もする。
人間とは言えないかも知れないやつであったが、それでもショーツの中心をじろじろ見られるのは恥ずかしい。

だた、その男は加奈の制止を無視して、そのショーツの筋に向かって指を這わせようとしていた。
「やめて!!触って良いとは言って無いわ。」
加奈は、約束を違える事を許すつもりは無かった。
「約束を破るなら、契約は無し!」

男は最後の言葉に反応した。
”こ、こいつ約束は破れない?”
加奈がそう思った時だった。

『そうだよ。約束は厳守だ。けど、あんたもそうだからな。何でもやらせるって言ったよな?』
頭にやつの声が響く。
そう言いながらやつは今度は、言葉をしゃべった。
「マンコ触らせろ。」

「え!!」
加奈はやつの命令があまりに直接的なことに驚く。
”こ、断ることできない...”
やつも約束を守る以上、加奈も約束を違えることなどできなかった。
体を乗っ取られ、何をされるか解ったものではなかった。

「...触れば良いでしょ。」
加奈は、自分の性器を弄ばれるのも断ることができなかった。