1万円を握り締めた加奈は、タクシーが拾えそうな道に向かって歩く。
”早く、家に帰ろう...”
勝気な加奈も、この異常な状況に動揺しっぱなしだった。
”人のいない安心できるところに...”
その気持ちで、加奈は、いっぱいになる。
これ以上、他人の前で、恥ずかしいことをさせられたらと思うと、体が熱くなるほど、緊張する。
しばらく行くと、加奈は、向こうから、一台のタクシーが走ってくるのが確認できた。
加奈が手を上げると、静かに、タクシーが停車する。
「どこまでですか?」
ぶっきらぼうに運転手が加奈に声を掛ける。
「つれずれ駅方面のつれずれが丘の交差点を右.......」
加奈は、自分の自宅の場所を告げる。
「お客さん。支払い現金で大丈夫だよね。」
運転手が、若干疑うような声を掛ける。
若い女性の深夜の帰宅で、支払いもれがあることが多かったからだった。
「こ、これで足りますよね?」
加奈は、握り締めた1万円を見せる。
運転手は、万札を確認すると、「ああ。大丈夫です。」と急に敬語になり、車を進めた。
タクシーであれば、3,40分で自宅に着く。
順調に走り始め、4,5分がたち、加奈が、少し、安堵したときだった。
『ひまだな。 さっきの駅前の続きしてよ』
加奈の頭に思いもよらない言葉が浮かぶ。
”な、何言ってるの!!”
思わす、実声が出そうになるのを、必死にこらえる。
運転手に見られたら...いや、そもそもさっきの続きなんてどこだってできるわけ無かった。
『じゃあ、パンツ脱いで、...全裸になって運転手を驚かせちゃう?』
常識では考えられない発想だった。
加奈は、後部座席で、真っ赤になりながら、必死に拒否する。
”だ、だめよ。 絶対裸になんてならない!!”
ただ、相手は、いつでも自分の自由を奪える相手。
そう思うと、緊張で、背中に冷や汗が流れる。
その時だった。
「お嬢さん大丈夫?」
さすがプロの運転手である。後部座席の客の異変に気づいたようだった。
「え!だ、大丈夫です。」
現実の質問に、加奈は、頭を切り替え、たどたどしく返答する。
「ちょっと、考えごとしちゃって..」
加奈は、どうにか答える。
ただ、そんな加奈を見透かすように、あの声がする。
『そんな冷や汗かくほど嫌? じゃあ自分から進んでオナニーしなよ』
”そ、そんな...”
加奈は、無理な注文に、さらに身を硬くする。
当然、一刀両断に断る内容だったが、相手が相手である。
”なんで、そんな事言うのよ?”
加奈は、少しでも時間が過ぎるように、話を長引かせる。
『なんでそんな、当たり前のこと聞くかな!?』
加奈は、その返答の意味が解らなかった。
”だって、私困るでしょ? 知らない運転手の前で、変なことできない!”
いたって常識的な返答を、加奈が返す。
その返答は、非常識な答えだった。
『だって俺、女が恥ずかしがるの見るの楽しいから。』
”....”
加奈は、返す言葉も無い。
『自分から、進んで、タクオナニー? 見たいよねえ。』
勝手な言い分である。
その言い分がさらに増す。
『さすがに、タクの中で、全裸になれないだろ?』
『あのシフトノブでもバイブ代わりにする?』
加奈が、何も返答できないのをいいことに、勝手に話を進めていた。
”酷いよ...”
『でしょ?』
加奈が、涙目になりながら、情にすがったが、
いたって冷たい反応が戻る。
反応だけでなかった。加奈は、自分の体の自由がまた奪われる感覚に囚われた。
『じゃあ、まずは、ブラウス脱ごうか。』
その声が、聞こえたと思った時には、自分の指が、ブラウスのボタンに掛かり、
加奈は、自分の行動を必死にやめようと、神経に伝えるが、届かない。
”ぜ、全裸は、嫌”
加奈は、妥協するしか無かった。
『お! 妥協した? 自分の意思でオナニーするとこ見せてくれんだ?』
加奈は、自分の耳を覆いたくなるような、返答を受け、後部座席のシートにうなだれる。
『早く、股間さすれよ。』
相変わらず、加奈の気持ちなど、無視した催促だった。
”や、やらなきゃだめ? 許してくれないの...”
加奈にとって見れば、運転士にきずかれるかも知れないと思い、最後の抵抗を試みる。
『許してやったろ? 全裸にならなく良いんだから。 それとも脱いじゃう?』
ずかずかと、加奈の気持ちなど考えてもいない。
子供が、いたずらで、落とし穴を掘るかの様に、軽い言い回しだったが、
子供のように、残忍で、必ず実行するかのようだった。
”ば、ばれたら.....”
加奈は、そう思いながらも、今回は、自らの意思で、右手を自分のスカートの上にそれとなく移動する。
そして、自分の敏感な部分を軽く押さえる。
”な、何これ....”
あまりの緊張からか、先ほどの駅前での、死ぬかと思ったほどの刺激より、強い何かを感じてしまう。
バックミラー越しの運転手の横顔が、いつこちらを向くか解らない緊張感が、加奈を包む。
それでも、密やかに、自分の股間への圧力を高める。
”恥ずかしい...”
加奈は、真っ赤になって俯いた。
『ほら、気持ち良いだろ』
加奈の頭の中で、声が響く。
”気持ちよくなんてない!!”
加奈が叫ぶように返答する。
『気持ちよく無い? じゃあ、もっと足拡げてこすりあげろ』
結局加奈は、許してもらえなかった。
ばれないように、ほんの少し、足を広げ、ゆっくりと、自分の指先を動かす。
”私...こんなことしちゃってる...”
加奈は、自分の行動が信じられなかった。
まさか、公衆のタクシーで、自分からこんなことをしてしまっている。
『そうだよ。”私は、オナニーしてるんです運転手さん”って言ってみろよ』
”え!!”
そうだった加奈の考えていることは、見えないこいつに聞かれてしまっている。
”そんなこと言えるわけ無いでしょ!”
加奈は、さすがに拒否する。
『別に、頭の中で、言うぐらいできるだろ? 俺には聞こえるからさ』
加奈は、こいつにしか聞こえないなら...そう思うしかなかった。
”お、オナニーしてます。...運転手さん”
頭の中であったが、加奈は、思考が真っ白になってしまう。
”オナニー...車の中で、オナニー”
あまりに自分の妄想したことが、いやらしく聞こえ、思わず、反芻してしまった。
『いいじゃん。エロ女っぽくって。 マン汁垂れそうか?』
その声が、加奈の中をかき乱した。
”...ま、まん汁...”
加奈は、さらに驚く。初めて聞く単語だった。
ただ、その意味は、女性の加奈には、すぐに理解できてしまう。
”マン汁なんて言葉、言えない...”
そう思っても、やつには、総て聞かれていた。
『もう言ってるじゃん ”マン汁”って、頭の中でいいからさ、繰り返せよ。 何度も、何度も、何度も!!』
頭の中に響く声に、加奈は、妄想を膨らませてしまう。
口に出す言葉と違って、頭の中の思考を止めることは難しかった。
”マン汁...マン汁たれちゃう...嫌よこんなこと考えるなんて”
そう思えば思うほど、加奈は、そっちの単語が、頭をよぎる。
”ほ、ほんとにマン汁垂れちゃったら...う、嘘よ考えないんだから!”
”考えない!考えない...マン汁なんて..うっ嫌”
加奈はそんな自分の指が、先ほどより、運転手の視線を考えずに、動いてしまうのを感じていた。
”あっ動かしちゃ駄目...ばれちゃう!!”
自分の行動に気づき、加奈は、動きを緩める。
『ばれちゃうじゃ無いだろ? 垂れちゃうだろ?』
あからさまに、隠語をささやく、やつが憎かった。
”....っつ”
加奈は、垂れると言うわけでは無かったが、自分の体が、潤うのを感じてしまう。
”た、垂れるわけ無い...マン汁なんて...”
口には、出せない単語だったが、頭の中では、簡単に組み上がる。
それを聞かれていると思うと、恥ずかしさでいっぱいだった。
”ぬ、濡れてきちゃった...だめよ..だめ!ううん、これは汗..”
必死で、自分に言い訳をする。
「社内暑いですか?」
加奈は急に現実に引き戻される。
信号待ちになった所だった。バックミラー越しに、運転手が加奈に視線を向ける。
その視線は、空ろになっている加奈を、疑うような目つきだった。
「ちょっちょっとだけ。」
思わず、かみながら、加奈は、返答する。
その時、運転手の視線が、若干下に向かう。
”み、見られた!”
加奈は、自分の手が、スカートの上から、陰部を押さえていることに気づく。
わざとらしく、スカートの皺を直す振りをする。
もちろんスカートの上に手を乗せることは取り立てて変なことではなかったが、
加奈の手は、通常よりは、幾分奥に食い込んでおり、きわどいところだった。
その裾を直す行為が、余計に運転手の思考を膨らませる行為になるとは、加奈は気づいていなかった。
”な、何見てるのよ! 早く信号変わって!”
加奈は祈るような気持ちになる。
『運転手、お前の股間見てるぜ、マン汁見てもらえば? ほらマン汁をよ!!』
只でさえ、恥ずかしさで、いっぱいの時に、加奈は、頭を駆け巡る声に、うろたえる。
”ま、マン汁見てる?”
「し、信号変わりますよ」
”マン汁なんて出て無いわよ!”
「あ、すみません。」
”私...どうしちゃったの..”
普通の会話を運転手としているだけなのに、加奈は、自分の思考が崩壊したかの様な感じがしていた。
それから、数分、加奈の頭の中で、妄想が走る。
女の子として、口に出すこと..考えるのも恥ずかしい事柄だったが、止まらなかった。