宏美と、さくらの2人は、Clubの裏口から地下に降りていく。
”こ、こんな地下室があるの?”
さくらは、驚きを隠せなかった。

地下室と言っても、陰湿なイメージは、全く無く、清潔な、否、清潔すぎる研究所の廊下のようだった。
「こ、ここは何?」
思わず、さくらが、言葉を発する。

宏美は、平静を装う様に、返答した。
「見ての通り、研究所よ。」
そう言って、会議室のような場所にさくらを案内した。

「実は、ここのクラブは、表の顔なの。って言ってもClubも、非合法だけど...」
さくらは、何も言えず、ただ、宏美を見つめ、宏美の話の続きを待った。
「そして、ここで、麻薬や、媚薬、合法ドラックなどの快楽薬を製造してるの。」

恐ろしい言葉が、宏美の口から出る。
「実際、Cクラスまで落ちちゃう子って、2割程度だから、一生懸命、チップを集めれば、どうにかなる。
 だからみんな必死なの。」

「Cに落ちちゃうと...3ヶ月、披検体をやらされて卒業できる。」
宏美は、さくらを見つめながら、淡々と説明する。

「そ、その披検体をやれば、さっきみたいな変な事しなくてもいいの?」
さくらは、宏美に食って掛かる様に、問いただす。
「...そうよ。 生きていれば。」

さくらは、宏美の言葉に、固まった。
”い、今、生きていれば...って”
「助かって、卒業できる割合は、私は、知らないわ。雑婦の子の話を聞くと、半々ぐらいらしいけど。」

さくらは頭が混乱していた。
Cクラスって、何をさせられるのだろうか?
まだ、さくらにとっては、老人相手に、変態行為を強要されるぐらいなら、検体とかいう方がましと思った。

「見なさい!!」
宏美は、会議室の片側のブラインドを引き上げる。
ブラインドのを開けると窓越しに、恐ろしい光景が見えていた。

無菌室のような大きなホールで、何人かの医者のような人物が、防護服のような白衣を着て動き回っていた。
それだけでは、異様とまでは言えなかったが、製造工場の片隅に、なにか蠢くものがあった。

「に、人間!!」
さくらは声をあげてしまう。
そこには、十人ほどの、若い女性が全裸で、”くくりつけられていた”のだった。

ある女性は、大の字に、ある女性は、四つんばいで、片隅では、ブリッジをしているような格好であった。
どの女性も、さくらと同じぐらいの歳で、みな綺麗な女性であったが、苦痛からか、快楽からか、
言い表せない、表情をしている。

手足には、アルミ製と思われる拘束具のような物で、動けなくされている。

「な、何のために、こんな事を!!」
さくらが、宏美に叫ぶ。
「...薬の効能のテストとか、何処まで投与したら、壊れるかのテスト..」

さくらは、自分の足に力が入らなくなっていた。
立とうとしても、立っていられず、その場にしゃがみこんでしまう。
「こ、こんなの...こんなの..人として許されない!!」

それでも、宏美は、冷静だった。
「そうね..けど、私も貴方も、もう、落ちちゃってるのよ...」
ぼそりと、宏美は呟く。
「だから、チップを貰って卒業しなきゃいけないの...」

さくらは、自分の膝が、ガクガクと震えるのを止めることが出来なかった。
その様子をみていた、宏美が、備え付けの受話器を挙げる。

「支配人ですか? 宏美です。  さくらが、Cクラスの見学を済ませました。」
宏美は、支配人に報告しているようだった。
「はい。 解りました。」

支配人に何か言われたのだろうか、宏美が、さくらに声を掛けた。
「あそこに居るCの子の中で、だれか、選択して。」
さくらには、当然その意味が解らなかった。

「せ、選択って、何をさせるの?」
床に座ったまま、さくらが、聞きなおす。
「検体に決まってるでしょ? どの子にやらせるの?早く選択しなさい!」

宏美は、さくらに説教をするように、選択を促した。
さくらは、拘束されている女性達を一瞥する。
”わ、私の選択で...彼女達が....”

そう思うと、さくらに、選択することなど出来なかった。
「え、選ぶことなんて出来ない..」
さくらは、宏美に返答する。ただ、帰ってきた答えは、冷たいものだった。

「じゃあ、さくら、貴方が検体しなさい。」
宏美の言葉に、さくらは、ただ、首を横に振るだけだった。
その時だった。会議室に、黒服の男性が、2名入って来た。

「さくらさんは、自分で、検体するとのことよ。」
宏美は、黒服に告げる。
黒服は何も言わず、しゃがみ込むさくらの脇の下に肩を入れ、無理やり立ち上がらせる。

「や、やめて!!」
さくらは、抵抗するが、2人掛りの男から逃げるすべは無かった。
「じゃあ、誰にするの?」 宏美が再度声を掛ける。

”え、選ぶことなんか無理よ...”
「....」
さくらは、答えることが出来なかった。

”私..どうなっちゃうんだろう...”
両脇を抱えられながら、会議室から、さくらは、引きずりだされた。
そして、あるドアを、宏美があけ、その中に、さくらは、押し込まれた。

「あ!!」
その声に、数人の女性がさくらに視線を向ける。
その視線は、先ほどのCクラスの子達だった。

さくらは、検体場に連れてこられていたのだった。
Cクラスの子達は、どのような状況なのか理解しているようだった。
今までも、同じような経験をしていたのかも知れない。

「え、選ばないで...」 拘束された全裸の女性の一人が声を挙げる。
その声を無視するように、1人の白衣を着た男性がさくらに近づいて来た。
その男性の手には、男の性器をかたどったゴム製の物体があった。

そして、あからさまに、そのゴム製の棒に、注射器でなにやら液体を注入する。
感情の無い、冷静というか機械のような声で、説明する。
「新開発の合法ドラッグです。規定の3倍の量を、吸収の早い膣から投与しても、大丈夫か検査をします。」

まるで機械のような男だった。
さくらや、宏美ほどの可憐な女性を前にしても、何の感情も上がらないようだった。
「検体者は、どちらで?」

その声に、黒服が答えた。
「この子です。」 そう言ってさくらを差し出そうとする。
「嫌! いやよ!!」
さくらは、必死に逃れようとするが、空いている検査台に向かって運ばれようとしていた。

「まって!」
宏美が、黒服に声を掛ける。
「さくら、最後よ。 選ぶか、さよならか?」

さくらは、観念した。
もうCクラスの子達と目を合わせることも出来なかった。
「ご、ごめんなさい...そ、その手前の子でお願いします。」

「嫌!!!!!!!!」
指名されたCクラスの子が悲鳴を上げる。
「解りました。」
機械のような男が、行動を開始した。

全裸で、4つんばいに固定されている女性の下腹部に、ゴム製の物体を差し入れる。
「はうっ...」
女性が、声を挙げる。ただ、その妖艶な喘ぎ声が、動物のような悲鳴に変わるまで、数秒と掛からなかった。

宏美とさくらは、その残響を聞きながら、研究室を後にする。
さくらの脳裏には、無理やりとはいえ、罪悪感と、Cクラスの実態が焼きついて離れなかった。


その足で、宏美は、さくらをある部屋に連れて行く。
「ここが貴方の部屋。卒業まで使っていいわ。 私が教えられることはここまでよ。」
「明日からは、お互いライバルだから..がんばってね。」

それだけ宏美は、言い残し、さくらの部屋を去って行った。
部屋に一人残されたさくらは、絶望の縁に居た。
”もう、どうする事もできないのかしら....”

さくらは、ベッドに身を投げ出し、考える。
ただ、涙だけが止まらなかった。

そんな時、ドアをノックする音がする。
さくらが、顔を挙げると、そこには、支配人の姿があった。
「今日は疲れたでしょ?」

意外な優しい言葉だった。
「...はい。」
さくらは素直に返答する。

「先に厳しい現実を見てもらった方が良いと思って宏美にお願いしたんだけど、お灸がきつ過ぎたかな?」
そう言って、支配人は、笑みをこぼした。
さくらは、不安気に、支配人を見つめる。

「そういえば、さっきのCクラスの子、最後快感で失神しちゃったみたいだけど、今回は何の問題も起こらなかったそうだ。」
支配人は、さくらの一番気にかかって居た事を報告する。
それと同時に、なだめるように、話し出す。

「さくらさん。大丈夫。お客様のご要望に逆らわなければ、Cクラスに行くような事は僕が許さないから。」
「その代わり、一生懸命、お客様に、ご奉仕するんだよ。」

支配人は、さくらに、子供にに言い聞かせる口調で、命令する。
「わかったかい?」

今日の非常な行為からすれば、支配人の、その笑みは、天使の様だった。
”し、支配人....助けてくれる...”
さくらは、「はい。」と支配人に返答していた。

支配人は、心の中で呟く。
”1人、出来上がり....”
そんな事は、オクビにも出さず、支配人が、さくらに返答する。

「ありがとう。 明日からがんばって、早く卒業してください。応援してます。」
そう言ってさくらの部屋を後にした。