圭子は動揺していた。つれずれの要求は、悪夢の要求だったが、
圭子が、やりたくない事 いや、人間としてありえない行為を要求されればされるほど、
自分の惨めな姿を想像し、体が欲求してしまっていた。

”しょ、職場で、ブラウスをはだける....”
”絶対、できない...”

圭子は、自分自身の気持ちを落ち着かせ、社会人としての、聡明で、希望をもった女性に
戻ることにした。

「あっ。」
圭子の真っ白なブラウスが、茶色に染まる。
「熱い!」

その圭子に、数人の社員が圭子に視線を向けた。
”私...どうかしてる..”
そう思ったが、口からは、別の言葉がでた。

「ブラウスが、しみになっちゃう..」
圭子は、慌ててハンカチを取り出す。
本当に慌てていた。 妄想と現実が、混乱している。

自分の真っ白なブラウスが、コーヒーによって茶色に変化していく。
それは、圭子自身のことかも知れなかった。

計画通り...否、計画というより、妄想内の自分の行動が、
現実のオフィスになっただけで、計画というものではなかった。
実際の熱さと、頭の中の混乱で、圭子は、自分のブラウスのボタンに手を掛けた。

1つ、2つ、3つ  ボタンを外し、手に持ったハンカチを胸元から差し入れた。
「濡れちゃう..」
圭子は、そう言いながら、ブラウスが含んだコーヒーをハンカチで拭う。

そのとき、野田達、数人が、唖然として圭子の様子を伺っていた。
コーヒーをこぼして取り乱す圭子の姿というよりも、
その胸元から、白いブラと、柔らかそうな圭子の胸の肉が覗いていたからだった。

俯き、必死にコーヒーを拭っている圭子の胸は、いくらブラをしているとは行っても、
その重みで、下に向いている。
ただ、ちらリズムを通り越し、完全に露出いているため、なんと声を掛けて良いかと、周りも躊躇するほどだった。

野田を含め、数人の男は、圭子を制止もせずに、無言で、圭子の胸元を凝視していた。
普段は、仕事中でも顔を直視するだけで、まぶしさを感じる圭子が、
胸元をはだけ、その秘めやかな胸を公開しているのだった。

そうしている間にも、圭子は、自分のハンカチで、ブラウスのしみを拭う。
汚れを落とすために、手を前後させるたび、ブラに収まった真っ白な圭子の胸が、
歪む。

”み、みんな見てる...”
周りから見れば、圭子は、まったく気付いていないような感じだったが、圭子自身は、
野田たちの視線を痛いほど感じていた。

”オフィスで...みんなの前で、胸を公開してる...”
”あいつの指示で...”

圭子は、上ずっていた。
その場にいた全員が、気付かなかったが、圭子の真っ白な胸は、羞恥で、ほんのりと赤くなっていた。
「どうしよう...濡れちゃう...」

圭子は、必死にコーヒーを落としながら、一人事をつぶやく。
”濡れちゃう...”
それは、けして、ブラウスのことではなかった。

圭子のショーツもまた濡れ始めていた。
その量は、圭子も、人生始まって以来と思えるほどの量であった。

”も、もうこれ以上耐えられない...”
圭子は、必死に羞恥を堪えたまま、ブラウスを拭った。
そして、いまさら気付いたように、顔を挙げた。

「あっ..」
驚きとも、喘ぎとも付かない圭子の声が挙がった。
周りで見守っていた野田達は、急に顔を挙げた圭子の視線を外すこともできなかった。

圭子は、野田達と、視線を交わす。
野田の視線は、自分が、公開している胸に当然向かっていた。
解っていたこととはいえ、実際の野田の視線を確認すると、圭子は一瞬でのぼり詰める。

「嫌!」
それしかいえなかった。
慌てて、ブラウスで、胸元を隠す。

照れくさそうに、野田は、圭子に言った。
「だ、大丈夫?」
自分は、さも、圭子の事を心配しているかの口ぶりだったが、なんとなく、惜しそうな声だった。

”みんな..私の胸見たのね..”
圭子は、そう思いながら、慌てて、その場から立ち去るように、
今日の定位置..お手洗いの個室に駆け込んだ。

お手洗いに駆け込んだ圭子がまず、したことは、ブラウスのしみをとることではなかった。
圭子の体は、羞恥でほてり、もうどうする事もできない状態だった。
ポケットから、自分のブラウス以外の濡れてしまっているところを確認する。

そこは、今までで、想像もできないほど、濡れそぼっていた。
”み、見られるだけなのに...”
自分の体の変調を実際に確認してしまった圭子は、確認だけですまなかった。

そのまま、自分の指をショーツの隙間から、滑り込ます。
”あっ...凄い...”
自分の感覚が恐ろしかった。

ただ撫ぜるだけの行為が、なにか恐ろしくきもちいい。
圭子は、この高ぶりを抑えることができず、個室で、自分の体に指を滑らせる。
お手洗いに入る際、自分以外の人間が、いない事は確認していた。

「..っああ。」
そう思うと、押さえられずに、軽い喘ぎを発する。
それと共に、ショーツの中からも、粘膜の擦れあう、隠微な音が立った。

”自分から、見せ付けちゃった...”
圭子は、その気持ちを携帯にぶつけていた。
けして強制ではない、命令だったが、圭子にしてみれば、古代の呪いのように、離れることができなかった。


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こぼしちゃって、見られました。
視線を感じて。
私、狂ってるの?
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圭子は、片手を埋没させながら、もう片方の手で、携帯に、自分の思いを書き入れる。
そして、送信する。
”そう..狂ってるのかも知れない..”
圭子は、そう思いながら、自分を攪拌する指の速度を上げる。

脳裏に、同僚の胸元を見つめる視線を浮かべた途端、直ぐに、体が軽い引きつきを起す。
”だ、だめ...”
そう思いながら、個室で、さらに、自分をいたぶる。

「ガチャン.」
誰かが、圭子の隣の個室を利用しようとしていた。
”だ、だれか来た...”

別に何事も無いことだったが、自分が行っている行為に、より罪悪感を感じる。
ただ、圭子の脳裏には、野田の視線が焼きつき、自分の指を押さえることができなかった。

”ああつっつ..”
声は、さすがに挙げられなかった。
指からの動きも、音を立てないように、ゆっくりと動く。

ただ、ゆっくりとなる分、一回の圧迫の強さがどんどん強くなっていった。

「カラン..」
隣の個室から、トイレットペーパーを回す音が聞こえる。
”こ、こんなところで...”
一瞬、圭子は、そう思ったが、

「カラン..カラン..」
隣のだれかが、立てるペーパーカッターの音に、あわせるように、
圭子の体は、痙攣し、便座に突っ伏した。

少しの放心の後、圭子は、着替えを済ませ、自分の席に戻る。
「大丈夫だった?」
野田は、相変わらずの口調で、圭子に声を掛ける。

「大丈夫です。」
一言、圭子は、答えたものの、2人は、なんとなく今までの感じと違うことを思っていた。

”み、見せたのよ...”
圭子は、そう思っていた。
”見られてたんだよ。”
野田は、圭子の胸元を再度思いこしていた。

圭子は、仕事を始めたが、回りの視線が気になってしまう。
”見られた....から”
その通りだった。

多くの男達は、着替えて清楚に戻った圭子の顔を確認し、その隠れてしまった胸元を想像していた。
その視線が、圭子には痛かった。

それからの数時間は、普通の仕事に戻る。
昼休みも終わり、もう、夕方に近くなっていた。
圭子は、妄想を吹き飛ばすかの勢いで、職務をこなしていた。

”ブブブブブブブブブブ”
圭子の携帯がメールの着信を知らせる。
圭子は、その振動に、身震いした。

”忘れようとしてるのに.....”
その携帯のアドレスを使うは、あの男だった。
”また、何か要求される...”

一旦躊躇するが、圭子は、押さえられず、携帯を確認する。


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狂うのも、気持ちよかっただろ?
こんな、いい思いをさせてやったのに、お礼が無いなんて失礼な女だね。
お礼として、さっきのボールペンを咥えている写真送ってよ。

もちろんカメラ目線ね(笑)
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圭子は、つれずれからのメールを確認して何度も確認してしまう。
それは、自分に埋没させ、汚れた物を、口に入れろとの命令だった。
”口に含む...”

それ以上に、最後の一文が、圭子に重くのしかかる。
”私が誰って、ばらせって事....”

そんなことよりも、圭子は、つれずれの命令に逆らえなくなっている..嫌、
逆らいたくない..実行してみたい..自分を見せたい..
そんな自分が恐ろしかった。

”できない...絶対に..”
圭子は、拒否するように、自分に言い聞かせた。

まるで、コーヒーをこぼした時のように...