”みんなの前で、何をさせられるの?”
美咲は、恐ろしかったが、何としても、今までの痴態を販売されるなんて事を、避けなければならなかった。
「ほら!」香織は、美咲の制服を投げて渡した。
美咲は、慌てて、制服を身に付ける。
下着は、すでに冷たくなっていた。スカートも濡れて重くなっている。
美咲の惨めさがさらに高まる。
「これ家で使いなさいよ!」香織は、笑いながら、ライターとクリップを美咲のカバンに入れた。
”こんな物...”美咲は、心の中でつぶやく。
そして、とぼとぼと、家路に着くしかなかった。
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あれほど、待ち望んでいた明日は、あっという間に来てしまった。
”学校なんて行きたくない。”美咲は、朝を迎えていた。
新しい制服に身を包んだものの、学校に行く勇気が湧かなかった。
”行くのやめよう....行ったら、何をさせられるか...”
美咲は、制服のまま、またベッドに身を横たえる。
「ブルブルブルブル」
美咲の携帯が、バイブレーションする。
美咲は、緊張して、携帯のメールを確認した。
「おはよう! 私の机掃除しといてね。 香織」
美咲は、そのメールを確認した。
”掃除?..”
内心ほっとした。だた、実行するには、休むことができない。
体を起し、少し早いが、学校に向かった。
「おはよう!」早く来ていたクラスの何名かが、美咲に声を掛ける。
「おはよう。」返答するものの、昨日までの笑顔はできなかった。
美咲は、気付かれないように、香織の席に近づく。
机の上に、1通の手紙が置いてあった。
”嫌...”美咲は、その手紙が、自分宛だと認識した。
”何?”恐々手に取る。
封筒の中に、さらに1通の手紙と、メモが入っていた。
メモに美咲は目を通す。
”こんなこと...あいつに?”
そのメモには、香織のいたづらが書いてあった。
””””””””””””
このラブレターを教室で、山田に渡すこと。
もちろん ”好きです”って言うんだからね。
””””””””””””
山田は、クラスでも存在感の無い、小太りの男だった。
休み時間には、同じような性格の数人で、アニメの話をしている変なやつである。
美咲は、同封されている手紙にも目を通した。
””””””””””””
前からずっと好きでした。
私と付き合ってください。もし付き合ってくれるなら、
山田君の言うこと何でも聞いてあげる。
””””””””””””
”こんな手紙みんなの前で、渡すの?”
美咲は、慌てて、手紙をポケットに仕舞い、香織の机を掃除すると、自分の席に着いた。
”好きでも無い人にこんな手紙を渡していいの?”
今後の事を思うと、美咲は、自分が情けなかった。
ただ、実行しなければ、どうなるか...
さまざまな思いが、頭を巡った。
その時、もごもごといつも通りに山田が教室に入ってきた。
何時もは、なんとも思わない、存在すら気にしない相手だったが、
美咲は、固まる。
”相変わらず、気持ちわるい..”
山田は、登校して直ぐに、カバンから、少女マンガを取り出し、
同類の仲間と、最新号の感想を面白そうに、語り始めた。
山田の席の後ろが、香織の席だった。
欠席がちな香織が、今日に限って、遅刻もせずに現れる。
香織は、美咲を見ると”ニコッ”っと笑った。
”嫌!”
美咲は、その香織の笑顔を見て、心のなかでつぶやく。
さらに、香織は、顎をしゃくり、美咲を催促した。
美咲は、その香織の意思にのろのろと立ち上がる。
そのまま、山田に近づいていく。
”..好きです..”
美咲は、心で予行演習する。
”私は、香織の玩具...”そう思うしか、こんなことは、できなかった。
「山田君...」美咲が山田に声を掛ける。
山田は、驚いたように美咲を見上げ、慌てて、漫画を隠した。
山田にとって見れば、美咲は、自分とは、住む世界の違う憧れの存在のような女性だった。
「な、何?」山田が、答えた。
その様子をおかしそうに香織が見ていた。
「こ、これ受け取ってください。」
美咲は、用意された手紙を山田に差し出す。
美咲の心臓がドキドキした。
”告白って、こんなに緊張する...”
香織を一瞥すると、足りないという顔をされる。
「す..好きです。」
美咲は、ついに、小太りの山田に告白した。
「ざわざわざわ...... 。」
教室中が、一瞬どよめき、静かになった。
山田は、急に照れた様に、その手紙をおずおずと受け取る。
美咲は、教室中の視線を受け、慌てて自分の席に戻った。
”こんなことさせて、なにが可笑しいの?”
美咲は、顔を真っ赤にさせて席に座った。 なにか気恥ずかしかった。
「や、やめろよお。」山田の声が聞こえる。
香織が、その手紙を奪ったようだった。
「私と付き合ってください。もし付き合ってくれるなら、山田君の言うこと何でも聞いてあげる。」
声を上げて、手紙の内容を読み挙げてしまった。
教室中が、またどよめきに包まれる。
「何してもらうの? 山田!」香織が、山田に声を掛ける。
「な、何って...」山田は、おどおどしていた。
「何でも聞いてくれるって!」香織は、美咲を見ながら、茶化すように言った。
香織は、山田が、持っていた漫画を取り上げ、ページをめくる。
「おい山田!こんなのしてもらえば!」
そのページには、主人公の女の胸に山田とは、正反対のカッコイイ青年が、顔をうずめている描画があった。
周りもその漫画を覗く。
「おお!...すげー」周りも騒ぎだした。
「美咲!」香織が、美咲を呼ぶ。
”こんなのって、何が書いてあるの?”美咲は、香織に近づく。
「ほら!これやってやんなよ!」
漫画を美咲に渡した。
その描写は、綺麗だった。美咲なら、その主人公に変われるほどの容姿を持っていたが、
相手が、山田だと、ただのエロ漫画になってしまう。
”山田君と私が?”美咲は、その描画を見て驚いた。
もちろん山田も驚いている。
「好きなんでしょ?」香織が、笑いながら一瞬、美咲を睨みつけた。
「..は..はい。」
”みんな居るのよ。”美咲は、恥ずかしかったが、香織を怒らせる訳にはいかなかった。
そのまま、山田に近づき、座っている山田の頭を、自分の胸に抱いた。
美咲のふくよかな胸が、山田の顔の形に歪んだ。
山田は、その感触と匂いに卒倒しそうだった。
美咲は、自分の胸の中にある山田の頭が、気色悪かった。
「おーーー!山田いいなーー。」周りが、またざわめく。
その中で、女子生徒の一部からは、非難の声が上がった。
「なにあれ! 自分に相当の自信があるみたい...」
「ご、ごめんなさい。」美咲は、教室のさまざまな反応に驚き、山田に謝りその場を離れた。
その後、始業に向けて、続々と生徒が登校してきたが、
1人増えるたび、その話題で、持ちきりになった。
”恥ずかしい...”美咲は、机で小さくなっていた。
もう少しで、授業が始まる。 ほとんどの生徒がクラスに出席していた。
”ブブブブブブブブ”
美咲の携帯が鳴る。 美咲は、その内容を読む。
”もうだめ...”美咲は、そう思いながらも席を立つ。
山田の前に歩いていった。
先ほどの事もあり、教室中が、美咲の行動を注視した。
「山田君...私の..胸どうだった? 他にも何でも言ってね。」
美咲は、羞恥の言葉を口にし、恥ずかしそうに席に戻る。
”私...なんてこと言ってるの?”
恥ずかしさが、こみ上げた。
「美咲って最低ね..」女子生徒から、愚弄の声が聞こえる。
山田は、呆然としていた。自分に何が起こったのか解らなかった。
「おい! 何でも言ってっていってるぜ。」
山田の近くにいた井上が、山田に声を掛ける。
「胸触らせてもらえよ。」山田に井上が、言った。
「え? いいよそんな..」山田は、相変わらず、もごもごしている。
「美咲。山田が、お前の胸触りたいって!」井上が、美咲をからかうように、言った。
”酷いこと言わないで....”
美咲は、俯いて、顔を赤く染めた。
”ブブブブブブブブ”携帯が鳴る。確認する必要も無かった。
美咲は、立ち上がる。
顔を真っ赤に染めながら、山田に近づく。
”胸を触らせにいくの...私..”
「ほんとにやるぜ!...そこまでするの?...変態?」
さまざまな声が挙がる中、山田の手を美咲が取る。
その手を自分の胸に持って行き、胸の感触を山田の手に移した。
”みんなの前で...”美咲の頬に涙が流れた。
「おお!」 歓声が上がるが、美咲の涙に静かになった。
そのまま、顔を俯かせ、席に戻る。
教室に変なフインキが、流れる。
泣きながら、自分の胸を触らせる行為に男達は、興奮したが、異様な感覚が教室を支配した。
その時、井上が、笑いを取るために、美咲に声を掛けた。
「山田が、俺にも触らせてあげたいって言ってるんだけど。」
教室が、一旦笑いに包まれる。
”まさか?”美咲が、思った瞬間の出来事だった。
”ブブブブブブブブ”
美咲は、立ち上がり、井上に近づく。
さすがに、井上も驚いた。
「べ、別に...冗談。」
そう言ったものの、美咲は、井上を睨みながら、手を取り、自分の胸を触らせる。
「ま、まじ?」井上が、驚く。もちろん教室中が、固まっていた。
井上の手に、美咲の柔らかい胸の感覚が痺れのように残った。
”...もうやめて..”美咲は、そう思いながら、席に戻った。
「山田のやりたいことって言えば、何でもやってくれるんだって。」
静かにしていた、香織が、”しん”となった教室全員に聞こえるように言った。
「........」
不良の香織が、教室で、大声を上げることなど、今まで無かった。
クラス全員が、”何かある”そう思った。
「おはよう。」 1時間目の先生が、教室に入ってきた。
なんとなく違う空気の中、授業が始まった。