都内でも有数の進学校、W高校3年A組に美咲は就学していた。
 

@とは言っても留学を経験しており、”20才”を超えている。

その年の2月末、来年からの大学進学も美咲は決まっていた。
そもそも、3年間の成績は、学内でもトップクラスで、
多くの大学の推薦枠があったため、美咲は、A大学の推薦枠を取っていた。

ある日の午後、美咲の友人の京子が話掛けてきた。
「美咲は、推薦でいいよね。私は、志望大学は、だめだったし。気晴らしに遊びに行かない?」
珍しく京子が、美咲をさそった。

美咲と京子は、中学時代は、親友であったが、高校入学時から、疎遠になっていた。
美咲は、クラスが違ったこともあり、疑問を抱いてはいなかったが、京子は違っていた。
京子も、成績、容姿とも悪くはなかったが、美咲に比べると、全て劣っていた。

中学時代は、そんなに気にならなかったが、高校に進学して、異性の目が気になる年頃になると、
どこに遊びに行っても美咲と比較されることが、大きなプレッシャーになっていた。

そこに今度は、大学の推薦を取った美咲と、受験に失敗した京子。あくまで自業自得なのだが、
中学時代から一緒だった京子にしてみると、決して認められることではなく、憎悪にまで、逆恨みしていた。

数日前・・・・・
京子は、高校での親友である香織とクラブに遊びに行っていた。
香織は、進学校であるW高校には、珍しいタイプで、一般の大人に言わせると不良と呼ばれるタイプの子である。
何の話のきっかけか、話題は、美咲の話になっていた。
「へえ。あいつむかつくな。」京子の歪曲した話を聞き、香織も同調した。
「つぶしちゃえ。」香織は笑いながら、美咲を落とす方法を京子と話し合った。
・・・・・

「いいよ。私も今暇だし。京子とは久しぶりだしね。」
美咲は誘われるまま遊びに行くことにした。
「駅前に閉店セールやってるブルカリの店があったんだ。高校生でも手が出るかも知れないし。」

高級ブランドのブルカリの店があることは美咲も知っていて、一度見てみたいと思っていた。
結構繁盛していたにもかかわらず、閉店するだと何気無く思っていた。

実は、その店は、香織の知り合いが経営しており、偽物を扱う如何わしい店であった。
経営をやくざ紛いがしており、警察の摘発前に店を閉めるところだった。

2人は、そのブルカリの店に入り、1時間ほど見ていた。
閉店セールというだけあって、かなりの安い価格がプライシングされていた。

「これ買おう。」京子は、数万円のバックを購入した。
確かに、非常に安いと思ったが、高校生の美咲は、自分がブランドを身につけるのは、
まだ早いと思って、何も買うつもりは無かった。

一通り買い物を終えた後、店を後にすることにした。
二人が店を出ようとしたとき、店に設置されていた防犯ブザーが鳴った。
「京子!」美咲は、思わず京子を疑った。何かしてしまったのではないか。

その時、店員が2人の腕を取った。「お客様、念のため確認させてください。」
別室に連れて行かれ、それぞれの鞄を確認された。
「こちらはお買い上げされたものですね。」と京子の鞄を確認する。
京子は、レシートを差し出した。「失礼いたしました。」店員は、京子に謝罪した。

美咲は誤作動だったんだと思っていた。
しかし、自分の鞄から高価な指輪が発見されるとは、思っても見なかった。
「こちらもお買い上げいただいたものですか?」

店員が美咲に確認を取った。
実は、京子が、事前に美咲の鞄に差し入れた指輪だった。
「こんな指輪知りません。」美咲は、店員に答えると、店員の態度が一変した。

「やっぱり、万引きか。それにしては、額が大き過ぎる。」
値札には、87万円と付いていた。
「知りません。私じゃないんです。」そう美咲が弁明する。が、
「知らないではすまないね。友達は、ちゃんと購入しているのに、君は窃盗したんだよ。」

店員は、今度は、京子に向かって、
「あなたも、確認して。この指輪は、この子の鞄からちゃんと発見されたよね。」
と確認を求めた。

京子は、わざとらしく、「...美咲。なんてことを。」とつぶやきながら、
店員に向かって事実を確認したという態度を取った。

「京子!信じて、私じゃない。」美咲は京子に対して叫んだ。
店員は、その言葉を受けて、京子に対し、「君も共犯?」とたずねた。
京子は、共犯扱いを受けるのだけは困るという演技をしながら、店員に対し、
「私は何も知りません。ちゃんと私はお金払ったし。..美咲がこんなことするとは思わなかった。」

と嘘泣きを演技した。ここは筋書き通り、店員も含めうまくいった。店員は、
「そうだよね。君は、お金払っているし、あとで警察で証言してもらうかも知れないから、
連絡先だけ教えてくれれば帰っていいよ。」
と身元を催促した。

京子は素直に、連絡先、高校名を告げた。そして終わり際、美咲に向かって言い放った。
「美咲、なんてことを。私は嘘なんかつけない。店員さんの依頼があれば、事実を話すから。」
と泣きながら言って、事務所を後にした。

そして京子は、その別室を映し出すモニターのある部屋に入って、腹を抱えながら、笑い転げた。
「さまないね。その鼻へし折ってやる。」高校生とは思えない残忍な顔をしてモニターを、
食い入るように見つめた。

京子が去った別室で、店員が美咲に向かっていた。
「正直に認めれば、考えてあげるよ。」やさしく問いかける。
美咲は、「私はやっていません。でっち上げです。」の一点ばりだった。
見かねた店員は、ついに、
「物は君の鞄に入っていた。さっきの子も証言してくれる。真実か否かは、警察に判断してもらおう。」
と言って警察に連絡を取るまねをした。

さすがに、美咲は、事の事態を収拾しようと、
「わかりました。弁償しますから、それでいいですか?」そう言った。
自分は、そんなことはしていないが、警察に連絡されることだけは避けなくてはと思った。

店員は、その返答に余計立腹したように見えた。
「私も、始めは、それで許してきたんだよ。君みたいな子をね。」ゆっくりと話だした。
「結局、許しても罪を重ねるんだよ、そういう子は。この店閉める原因は、万引きだ。
許しても、罪をかさねるし、実際は万引きを見つけられる確立は低い。」

「今回の87万を見つけるまでに、何千万も盗まれているんだよ。
1回見つけられて、その商品だけ弁償されてもこっちは拉致が空かない。」

そして店員は、美咲をにらめ付けながら、忠告した。
「この店の負債は、万引きで、1億だ。その金を払うか、払えないなら、前科を付けてやってから、私が、お前に一生
付きまとって、行く先々で、窃盗犯の実情を語ってやる。」

「俺の人生この店の閉店でめちゃくちゃだ。お前の人生もめちゃくちゃにしてやる。」
美咲は、”この人も被害者なんだ”と思ったが、その相手に、自分が選択されたことにおびえた。
「すみません。けど1億なんてお金用意できませんし、前科なんて...」
なぜこのようなことになったのか、美咲は、我を忘れていた。しかし、店員は美咲を許す素振りを見せなかった。
「万引きって言ってもな、今回は、87万だぞ、数千円のCDとは訳が違う。」

もう既に、やったやらないの話ですまされる事では無いと、美咲にも想像が付いた。
この店員が、店の実情と今回の事件を警察に届けられたら、自分の訴えなんて聞き入られるわけがない。
この人も本気そうだし、一生犯罪者扱いされるなんて。
”どうしたら?” 美咲は、推薦の大学、これからの人生がどうなってしまうのだろうか?
心配で涙がこぼれた。店員に向かっては、懇願するしかなかった。

「前科だけは許してください。何か許してもらう手立てはないでしょうか?。」
その涙ながらの訴えに、店員も若干やさしめに、
「まずは、今回のことを認めて謝ってよ。こっちの気持ちの問題もあるでしょ。」
その言葉に、美咲は許してもらえるならと思い直し、

「指輪を取ってしまい申し訳ありません。許してください。」
とうとう罪を認める発言をしてしまった。店員は、謝罪を受け入れたかの様にうなずき、
やさしく、美咲に要件を伝えた。

「幾らなら用意できる? 1億は無理なら、1000万ぐらい?」それは美咲にとって、
どっちでも同じような金額だった。「10万円ぐらいなら用意できます。」
やっとの思いで、美咲は、店員に答えた。

しかし店員の返答は美咲の想像を超えていた。
「ふざけるな!自分は何も失いたくないってか!1,2年、風俗に埋まってジジイのケツ舐めてりゃ
1000万ぐらい稼げるだろ!。」

その凄みは、ブランドショップの店員の言動ではなかった。本来、美咲を陥れるための店員の演技だった。
脅す、圧るが、この店員の本業であり、美咲の歯の立つ相手でなかった。
「そ、そんなこと、できません。」必死で訴えた。
「何でできねえんだ。五体満足だろうが、メンタマに保険掛けてくり抜くよりゃましだろ。」

美咲はその凄み必死に耐えていた。
「そんなことやれません。親になんて言えば..」そう答えた。

そのころ、裏では、京子は相変わらず、けらけら笑っていた。今までお高く留まっていた美咲が、
涙を流して許しを請う姿をみて滑稽でならなかった。

店員は、美咲の態度を確認し本題に入り始めた。
「親にも学校にもばれたくないし、前科も付きたくないんだろ。」美咲は同意するしかない。
「はい。すみません。」都合がいい答えかも知れないが、そう答えるしかなかった。

店員は、若干美咲をあやす様に、
「何もせずに、はい、さよなら はできないんだよ。..そうだな、
これから、明日まで友達のとこに泊ることにしろ、その間、AVに出演すれば許してやるよ。」
と要求した。

美咲は、AVという言葉に、嫌悪を感じ、「..嫌。」とつぶやいた。
「大々的に売り出すことはしないよ。裏のマニアにしか、分からないようにしてやる。ここまでが譲歩だ。」
そう店員が言った。
「・・・・」美咲は何も答えられず、時間だけが過ぎていく。

観念したように、店員は、荒々しく、美咲の腕を掴むと、
「解った。警察に行こうぜ。」と言うと、まだ客のいる店内に引きずり出した。
客のほぼ全員が、店員と美咲を見つめる。

ほとんどは、細身のか弱い女性に、なんて事を。と店員に非難の目を向けたが、
「警察に行こう!」と店員が声を上げると、様子は、一変し、美咲へ非難の目が集中した。
美咲は、人生で始めて受ける犯罪者への社会の目を受け止め、
必死に顔を見られないようにうつむいた。そして
「いや!」と部屋に戻ろうとした。

店員は、その行動を止めずに、2人でまた元の部屋に戻った。
「どうするんだよ!」と店員に怒鳴られる。
美咲は、実際の社会で、犯罪者に向けられる風当たりが身にしみた。
こんな視線をこれから一生、受け続けることには耐えられなかった。

追い討ちを掛けるように、店員が言った。
「明日の朝まで言うこと聞いてりゃ、何も無かったことにしてやるって言ってんだろ!
この店の負債を少しでも減らさないと俺が首を括る羽目になる。」

美咲は、心の中で自分に言い聞かせる。
”明日になって全て忘れてしまえばいい。”
美咲は正常な判断ができなくなっていたのかもしれない。

「解りました。やります。」ついに、美咲は冤罪を認め、京子の策略に乗ってしまった。

店員は、たたみかけるように、「やりますじゃねえだろ、AVに出演させてください、だろ。」
「こっちは、お前の人生壊してやった方が面白そうなんだから。」と美咲を脅迫した。

[...出演させてください。」美咲の頬に涙が伝った。
こんなことに何でなってしまったのだろう。事の決着に、怖さがひろがり、
膝がわなわなと震えた。

「用意するから、少しここで待ちなさい。」そういい残し、部屋の鍵を確認して部屋を店員は後にした。
美咲は、これから自分がどのような事をするのか、考えたが、
あまりにおぞましいことだと思い、その想像を打ち消すように、
”明日に早くなれ。明日..!”と必死に願っていた。

一刻の後、店員は、スーツ姿の男を連れて部屋に入ってきた。
店員は、男に向かって「これが、お話した商品です。」と話した。
男は何も言わず、美咲を見つめた。
美咲は一瞬、目が合いそうになり、伏目がちになった。

”私が商品!!”こんなことになったとは言え、屈辱でいっぱいだった。
それに輪を掛けるように、その男は店員に、数百万の札束を投げて渡した。
男は、「へえ。こんな子が、何でもOKの撮影を受けるんだ。」とつぶやくと

美咲へは、「これに、サインして。」と契約書を渡す。
美咲は、膨大な札束と、何でもOKの撮影という言葉に、絶句した。
「何でも って! どんな..」とつぶやいた。契約書を確認すると、

そこには、
”明日の9:00まで、甲のいかなる要求に従い、その際の記録物の著作権は、乙が所有する。
 その代価として 金500万を支払う
 甲 「佐々木 一郎」
 乙 「 ______ 」   ”


と記載されていた。
美咲は、サインに躊躇した。「いかなるって。」と佐々木を見上げ拒否の態度を取った。
佐々木は、美咲には、何も言わず、店員に対して、
「お前、今、金 受け取ったよな。2人とも沈んじゃうよ。」と楽しそうに言った。

店員は、急にあわてて、美咲に要求した。
「早くサインしろ。お前と俺の人生がかかっているんだ!!もう後戻りは、できねえ。」
美咲は、店員の尋常でない様子、佐々木の不敵な笑みを確認し、どうすることもできず、
泣きじゃくった。

佐々木は、その様子を見て、
「わかったよ。 これで安心するか?」そう言って、契約書の文中に文言を書き入れた。

”但し、明日以降、生活に支障を残す外傷および、現在の概観を変える要求は除く”
と書き入れた。

通常の思考であれば、この但し書き程度では、相当な要求を受け入れなくてはならないということが
解っただろうが、この場の美咲は、
”明日無事に帰れるんだ”その一心と”少しでも軽くなった。”の思いだった。

ペンを差し出された美咲は、恐怖に震え、泣きながら、サインを書き込んでいった。
佐々木はその契約書を受け取ると店員に向かって言った。
「店閉めろ。撮影開始するからな。」