LD(学習障害)のこと・・・


□昨年、ぼくは、LDについていろいろな人に次のような話をしていた。

 ■通級で通ってきている親御さんで、自閉症の親の会に入っている方がいます。
  ダウン症の親の会に入っている方もいます。
  親の会という組織があるおかげで、随分と気持ちが楽になったり、励ましを受けたり、
  勇気をもらったりしている方がたくさんいます。
  聞くところによると、筋ジスの親の会もあるそうです。

  ひるがえって、LD(学習障害)はどうでしょう。
  統計から言えば、LDと思われる子の数は自閉症やダウン症の子どもたちよりずっと多いのです。
  研究者によって、違いますが、2パーセントくらいから5パーセントくらいがそうだと言われています。
  2パーセントだとすると、50人に一人です。
  5パーセントだとすると、20人に一人です。
  普通の学級に一人くらいはいる計算になります。
  LD(学習障害)と思われる子の数はとても多い数になることが想像されます。

 ■さて、LDとは何でしょう。
  次のような特徴があります。

  ・ 基本的には全般的な知的発達に遅れはない。
  ・ 聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち、ある特定のものに落ち込み がある。
  ・ 視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの他の障害ではない。
  ・ 育て方が原因ではない。

  LDはこれだけで終われば話はわかりやすいのです。
  でも、LDは他の行動面の問題もあわせもつことがあります。
  落ち着きのなさ、「多動」と呼ばれる行動です。
  また、不注意や衝動性が強かったりすることもあります。
  そうなると、担任の先生は大変です。
  親御さんの心配も大きくなります。
  お勉強がついていけるかどうかだけでなく、他に迷惑をかけないか、うまく友達と遊
  べるかなど社会行動がうまくとれるかどうか、心配はつきません。

 ■LDの子を持つ親御さんの精神的負担は決して少なくありません。
  学校での心配事だけではないからです。
  家でも、その子のことをめぐって、家族の考えがなかなか一致しなかったりすること
  は少なくありません。
  他の人に相談しても、わかってもらえない。
  どこに話をもっていけばいいのか、と悩んでいる親御さんはたくさんいると思います。
  でも、LDの子の相談機関はほとんどないのが現状です。
  幸い、中郷小特殊教育部は、LDの子の通級をしています。
  県内で見ると、まだまだ、相談機関は不足しているのです。

 ■相談機関だけではありません。
  親同士が同じ悩みを分かち合って、元気になる、前向きになれることが必要です。
  LD親の会が絶対必要だと思います。
  インターネットで調べてみると、LD親の会がない都道府県はわずか4県だけです。
  青森、岐阜、岡山、高知です。
  他の都道府県は、全部LD親の会をもっているのです。
  各地のLD親の会のホームページを見ると、実にいろいろな活動が行われています。

  ・ キャンプ、クリスマス会、算数教室などの遊びや勉強会を企画し、子どもたちの友達作り や社会性のトレーニングの活動をしている親の会。
  ・ 有識者の謙演会、子育て報告会、学校・職場見学会などの勉強会等を行っている親の 会。
  ・ 県・市町村の教育委員会・福祉関係団体・企業などに対して、LDへの理解を高める啓蒙 活動を行っている親の会。

  活動があるところとないところでは、LDの対策にどんどん差がひらいてくるような  気がします。
  興味ある人は全国LD親の会のホームページを一度、見てください。

□というような話をすることが増えていったのだ。
 その中で・・・

 他の地区で、「ことばと心を育てる会」の役員をしているあるお母さんは、電話で、痛切にLD親の会をほしいと訴えた。
 中学1年になるLDの娘さんがいる。
 中学に入って、いろいろ心配なことが増えてきたそうだ。

 また、別のあるお母さん。
 精神的に追い込まれている。
 電話口で何度も泣いていた。
 話を聞きながらも、きっと、同じLDの子をもつお母さんがいたら、ぼくなんかより、 深い共感や大きな励ましを与えられただろう。
 そう思わざるを得ないこともあった。

 全国LD親の会の事務局の方からは、長文の電子メールが来た。
 LD親の会の必要性が書かれていた。
 そして、力強い励ましの言葉も。

 今年赴任されたその大学の先生は前の赴任地で、LDの子に深く関わっていた方だった。
 LD親の会も何人かの親と一緒に作ってきた方だった。
 偶然、ある集まりのおり、その先生と話をすることができた。
 その先生とのつながりを大事にしようと思った。

 LDのことでいろいろ考えていた。
 ぼくのできることはたかがしれているけれど、通級や教育相談の仕事を通して、LDについて自分ができることを今後も考えていきたい、そう思っている。

(2001.1.9記)