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東京駅の八重洲側、ブックセンターから数寄屋橋・新橋方面に歩き、鍛冶橋通りを越えると富士屋ホテルがある。ホテルを過ぎたすぐの通りを左に折れて、「こんな殺風景なビル街に本当にそば屋があるのだろうか?」という不安もつかの間、すぐ右手にこのお店はある。 暖簾をくぐって中に入ると、すっきりとした矩形の店内はシンプルながらもディテールに凝った内装。席数もそんなに多くない。 |
しかし、このお店のそばは凄い!単なる「もり」が「800円也」というかなり破格のお値段にも心から頷けるほど、麺の完成度は極めて高い。 正統派の二八である。細めの切り幅は強烈なコシとシャープなエッジ感にぴったりとマッチ。素晴らしい口当たりとなる。「噛まずに流し込め」とのそば通の極意を敢えて無視してじっくりと噛みしだくと腔中に広がる蕎麦の香り。そして舌にはほんのりとした蕎麦の甘味。二八はかくあるべしと思わず言いたくなるようなそんな麺である。 当店のご主人が師事されたと言われる、山梨長坂「翁」の高橋邦弘氏が目指されているそばの究極の姿がここにあるような気がした。同じく氏に学ばれた方が開いているお店でこのレベルの麺(おそらく当店より更に上をいくかと思われる)を供するのは、「翁」の名を使うことを許された大阪は西天満「なにわ翁」ぐらいであろう。(かく言う庵主は未だに長坂に伺ってはいないが、パリ「円」でのそば会の席で氏の打たれたそばを賞味させていただく機会に恵まれた。) 対する「つゆ」だがこれもしっかりとしている。香りもいい。それでも余りに麺が素晴らしいだけにつゆにはもうほんの少し力があってもいいとは思うが、トータルなバランスとしては相当なレベルである。 、 さらに、明大前「冬林」で遭遇したような蛍光グリーンに輝く山葵、辛味大根と葱の薬味のプレゼンテーションも美しく、無駄のない内装と相俟って、味気のないビジネス街において全くの異空間を供するお店である。 中央区八重洲2-10-7 03-3516-6801 (地図は左の住所をクリック) 土日祝休 11:30-20:00 |