PJ80の改造(温特向上など)と測定                                          2006.12.31 T.Ajima

 早川さんのレポートに従い、温度特性に対して支配的なC14,C15,C16,C18を温度補償型()に変えました。結果はすこぶる良好です。

 

        図1 局発部回路図(周波数変動に対する温度の感度は、赤:高、紫:中、緑:小)

 

     図2 PJ-80キットオリジナルのコンデンサと温度補償型コンデンサ

 

変更後の温度特性を測定しました。図3に結果を示します。

 

 

 

 

                           図3 コンデンサ交換後の温度特性

 

周波数調整つまみの最高周波数、中点、最低周波数での温度特性を図3に示します。どの温度においても、周波数可変範囲内に競技周波数、ビーコン周波数が入っていることがわかります。温度による変動幅は、20[kHz]内に収まっており、競技中の温度変化を5度とすると、競技中での温度ドリフトは10[kHz]もないこともわかります。

 

因みに図4はコンデンサ交換前での温度特性である。温度特性もさることながら、今回の改造で可変周波数範囲も140[kHz]190[kHz]と36%広がっていることがわかります。

        図4 コンデンサ変更前の温度特性

 

 

 今回の実験で気づいたことがありました。音量(ゲイン調整つまみ)をまわすと局発発振周波数が変化することです。ゲイン最低の時の発振周波数に比べて、ゲイン最大の時のほうが330{Hz}ほど高いのです。低周波段のLM386が結構電流を食うものの、定電圧電源を使用しているためその影響ではありません。考えられるのは、ゲインを変化させた時に高周波段のバイアス電流が変化し、ツェナーダイオードで吸収しきれないことです。そこで、ゲイン最大時と最低時の各電流を測定してみました(実際は電圧を測定し、抵抗値から電流を算出)。

 高周波段のB-G間抵抗(R2、15kΩ)、E-G間抵抗(R3、1kΩ)の電圧は、ゲイン最低の時はともに0Vで、ゲイン最大時は、1.058V、9.456Vでした。従って、それぞれの電流は、0.071mA、0.456mAで、合計0.527mAが高周波段での電流増加です。

 一方、ツェナー電圧は、ゲイン最低時は3.884V、ゲイン最大時は3.867Vでした。差は17mVです。電源からツェナーへ電流を供給している抵抗(R7、150Ω)の両端電圧は、(6−3.884)V、(6−3.867)Vですので、ゲインを最低から最高にした時の電流増加分は、((6−3.867)−(6−3.884)) ÷ 150=0.113mAです。0.527mAと0.113mAの差である0.414mAはツェナー電流が減ったということです。

 整理すると、ゲイン最低時は高周波段の電流はほぼ0ですが、ゲイン最大にすると0.527mA消費します。その電流はツェナー電流が0.414mA減ることにより補填しますが、補填しきれない分(0.113mA)は電源から供給されるわけです。

 

 ツェナーダイオードにはもう少しがんばってほしいところですが、無理なのでしょうか?

ツェナーダイオードの等価回路は、定電圧源と直列抵抗Rzで、Rzが小さければ小さいほど定電圧特性はよくなります。データシートが見つからなかったので、上記の測定値からRzを求めてみます。Rzは17mV÷0.414mA=41Ωです。この41Ωが妥当か否かです。

文献(http://www.cqpub.co.jp/toragi/TRBN/contents/2007/tr0701/0701ana8.pdf) によると、この値は妥当であることがわかります。因みにツェナーで庵圧は3.9V付近です。(文献ではRzではなく、rDとかいてあります)

 

今回の実験では今までとは違い、電圧に関しても桁数が多くなっています。実はDMM(デジタルマルチメータ、すなわちデジタル表示のテスタ)を手に入れました。そこで、局発周波数の電源電圧依存性のデータを再取得しました。(図5)

          図5 電源電圧依存性

 

PJ-80オリジナルでは、電池は単三4本です。6V→4V(1.5V→1.0V)の電圧ダウンを考えると、受信周波数が20kHz高くなります。実際には競技中にそれだけの電圧変化はないでしょうから、実際には数kHzというところでしょうか。

 

まとめ

 コンデンサ4つを温度補償型(定数変更含む)にすることによって、

◇気温が大きく変化した場合でも無調整(夏・冬で再調整する必要なし)

◇気温変化による競技中での受信周波数変化はせいぜい数kHzである

◇周波数可変範囲が140[kHz]190[kHz]と36%広がった。

また、次のこともわかった。

◇ゲインを最大・最低と変化させると、受信周波数で330Hzほどシフトする。

◇電池電圧が公称電圧から終止電圧まで変化すると20kHzほどシフトするが、

競技中に限って言えば、せいぜい数kHzと予想する。

 

(実際には、数kHzのシフトがあってもなんら問題ない。)

 

 

■おまけ

 周波数可変範囲が、3.44MHz〜3.63MHzと、大幅にアマチュアバンドを超える広さになり、反面周波数調整がクリティカルになった。そこで周波数可変範囲をせばめる。オリジナルではR14が350Ωであったが、手持ちの1.5kΩに変えた。中心周波数の調整をして、結局3.48MHz〜3.62MHz(中心:3.54MHz)となった。

                                                 以上